BIMの課題と可能性・110/樋口一希/BIMと連動する積算システム・1

2016年4月21日 トップニュース

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 建築数量積算・見積書作成システム「NCS/HELIOS(ヘリオス)」(日積サーベイ製)とBIMとのデジタル連携の「現在」を3回に分けて報告する。


 □取材先のBIMソフトのシステム連携図によく登場する「NCS/HELIOS(ヘリオス)」を探索□


 筆者の編集者としてのキャリアのスタートは価格情報誌「積算ポケット手帳」(建築資料研究社刊)の編集部。各種資材単価の成否を検証するため、積算技術者が複数のモデル建物(図面)を見ながら電卓を超高速で操っていたのを思い出す。

 技術者は、2次元図面を経験則で3次元的に〔形態情報:Modeling〕として統合=BIM化し、積算基準に基づき図面上の標記=〔属性情報:I=Information〕を組み合わせ、積算していた。まさに「NCS/HELIOS」とBIMとのデジタル連携をアナログ的に体現していたわけだ。ここでは、アナログ的な積算・見積もり実務をBIMとのデジタル連携に移行する際の諸課題を明らかにしつつ、「NCS/HELIOS」利用のメリットもともに検証する。


 □概算でなく実施設計での建物(モデル)をベースに建築数量積算基準に基づき精(積)算□


 建築工程の進捗と積算(情報)との相関関係には、「業としての建築」固有の課題が内包されている。建物の企画・計画段階では、積算に必要な情報は不十分だし、基本設計でも設計者は積算に必要な情報を全て描かない。実施設計へと進捗するに従い、情報は拡充され、実施設計終了時には建築工事費算定が概ね可能となるが遅すぎるし、施工段階では、さらに現場固有の要素が付加される。これらの課題を解決するため、BIMによるプレコンストラクションと積算・見積もりシステムとの連携は不可欠との認識が広がりつつある。

 概(積)算に関しては、第33回「概算見積もりソフトとBIMの連携」で、「Cost Navi Pro」(建築ソフト製)が企画・計画段階での概算精度6%以内、標準偏差最大10%程度を可能とする手法について報告した。そのため同ソフトの主要ユーザーは、工程最上流での概算精度向上が死活的問題の発注者・建築主としてのマンション・デベロッパーなどだ。

 対照的に「NCS/HELIOS」は、基本設計段階での概算数量積算は勿論のこと、実施設計段階における建築数量積算基準に基づく実施詳細積算までをサポートしており、ターゲット・ユーザーは「業としての建築」のインサイダーである建設会社、設計事務所である。


 □BIM建物モデル構築を想定しやすい配置入力と既存図面の活用にも効果大のイメージ入力□


 積算に必要な建物情報の入力は、図にあるように「配置入力」「イメージ入力」「表入力」の3通りがサポートされている。

 配置入力では、構造部材の伏図に間仕切り、内部室、外部仕上げなどを配置することで面積、長さなどを自動計算する。壁仕上げでは、GL工法など軸種ごとに下地を自動認識する機能もある。

 イメージ入力では、PDF、DXFの図面データを画面に取り込み、必要なポイントを押さえて面積、長さ、箇所を計測、その寸法を用いて積算数量として転用する。表形式入力は、配置と同時に数量が計算され、表示される表を逆算的に用いて入力する方法。

 BIMソフトとの関係については、「Revit」(オートデスク製)がヘリオスのローカルファイル(TSVファイル)でのダイレクト連携、「ArchiCAD」(グラフィソフトジャパン製)、「GLOOBE」(福井コンピュータアーキテクト製)が中間ファイル形式(IFC)による連携を実現している。ST-Bridgeによる構造部材におけるデータ連携も可能だ。4月現在、業種別では、スーパーゼネコン5社+総合建設業65%、積算事務所30%、設計事務所5%、導入社数は約500社となっている。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)