BIMの課題と可能性・117/樋口一希/ダイレクト連携を実現したRebro・2

2016年6月23日 トップニュース

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 工程上流に位置する意匠(構造)設計における躯体など建物本体のBIMモデルを建築設備専用3次元CAD「Rebro2016(レブロ)」(NYKシステムズ)との間でどのように連携するのかを概説する。


 □意匠設計CADに先駆けて3次元的なモデルを採用した設備CADの優位性を引き継ぐ□


 設備CADは、意匠設計CADと比較して、初期の段階から3次元(的な)モデルを意識して進化してきた。CAD運用の主目的は、成果物としての2次元図面作成の効率化だが、設備CADでは、複雑な3次元形状を持つ空調・衛生・電気設備機器間の干渉チェックも課題となっていたからだ。

 そのために考案されたのが擬似的な3次元(的な)モデル=2・5次元モデル。技術者は平・立・断面図を相互視認して干渉チェックを行ったが、2・5次元モデルは奥行き情報を持たないため、平・立・断面図間の整合性が不完全で、とりわけ正確に配管の勾配を再現できないという決定的な課題があった。後発メーカーであったが故に、それら先行して顕在化した課題の解決のための好機を得たNYKシステムズ。当初から建築設備専用3次元CAD「Rebro(レブロ)」では3次元モデルを採用し、BIMとのデジタル連携への準備を進めていた。


 □BIMソフト「Revit」にアドインソフト「RebroLink2016」を付加してダイレクト連携実現□


 最新版の建築設備専用3次元CAD「Rebro2016」の5月30日リリースとともに公開されたBIMソフト「Revit(オートデスク)」とのダイレクト連携(レブロリンク)。BIMソフト「Revit」にアドインソフト「RebroLink2016」を付加することで可能となる。BIMソフト「Revit」で作成された建築・構造モデルと設備モデルを汎用の3次元建物情報モデルデータ形式であるIFCを介さずに、独自ファイル(*.RebroLinkFromRevit)形式で「Rebro2016」に取り込む。これによって建築・構造モデルは、「Rebro2016」側のモデル形式に変換、データ容量も軽減されるので、空調・衛生・電気設備機器の3次元モデルも“軽やかに”運用可能となる。

 設備モデルも「Rebro2016」側のモデル形式に変換され、「Rebro2016」上での空調(ダクト)・衛生(配管)・電気(搬送経路)モデルとなり、パラメトリックな性能を付与されるとともに、図面の追加作図や干渉検査、配管抵抗計算や圧力損失計算などが可能となる。

 なお、本稿第78回「日本設計とオートデスクの次世代BIM」(15年8月20日付)で報告したように、日本版MEPの強化を目指す日本設計の技術アドバイスの基、設備設計専用のBIMソフト「Revit MEP」との『形態情報:Modeling』と『属性情報:I=Information』を包含するより高度なデジタル連携もすでに実現している。


 □汎用の3次元建物情報モデルデータ形式であるIFCでのデジタル連携の特異性を把握する□


 6月15日にIAI日本から名称変更したbuildingSMART Japanが提唱する3次元建物情報モデルデータ形式のIFCによる「Rebro2016」との連携は、主に、梁・柱・壁・床・天井などの建築モデルの読み込みに用いられ、読み込み後は、「Rebro2016」のモデル形式(ドア・窓・壁の一部は汎用図形)となり、合わせてデータ容量の軽減も行う。

 IFCによる連携で特に注目できるのがGUID(Globally Unique Identifier)対応だ。IFCでは、単一のオブジェクトに、他のオブジェクトとは合致しない『Globally Unique Identifier:世界にひとつしかない固有の識別子』を付加できる。このようにオブジェクトを一意的に認識する機能を用いてオブジェクトの変更箇所を経時的にも把握するのがGUID対応だ。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)