BIMの課題と可能性・134/樋口一希/現場作業事務所でのBIM運用・1

2016年11月17日 トップニュース

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 ARCHICAD20製品発表会における竹中工務店の池田英美氏(西日本BIM推進WGリーダー・設計部構造グループ長)の基調講演「BIM Execution in Design-Build Practices」。賛意を込めた多くの拍手が送られたのは、講演を聴き、聴衆がBIMは離陸し巡航高度に向かいつつあるとの認識を深めたからに違いない。建設会社におけるBIM実践の現在と今後を象徴する優れた実例として報告する。


 □「業としての建設」にとって最も重要な生産拠点を訪問しBIM運用の実利を徹底的に探索□


 本稿第35~37回「建築主にとってのBIM運用」において北里大学病院の新病院プロジェクトでの日建設計とのBIM協働を報告したが、ここでは、講演標題が明示するように、建設会社としてBIM運用の優位性を最大限に発揮できる設計施工案件にフォーカスする。

 作業所は、「業としての建設」にとって最も重要な生産拠点であり、BIM運用の実利が直接的に「収支の多寡」に影響する。連載開始から足掛け3年、取材対象はBIM推進室などの本社機構であったが、ようやく作業所を訪問できる(受け入れ体制も整った)段階に至ったといえる。

 傍証もある。「施工BIM事例発表会2016」で設備サブコンは、建設会社からのBIM協働への問い合わせが急増しており、直接、作業所長からの連絡もあると報告した。BIM運用の裾野は作業所へと拡がっている。


 □作業事務所主導で関係者の全員参加で作成したBIMによる3次元施工モデルに基づき施工□


 地下鉄本町駅から至近にある大阪市西区西本町の信濃橋富士ビルの作業事務所。右側眼下に作業所が俯瞰できるビルの一室にあり、訪問した9月末には、基礎工事が完了し、地上躯体工事へと進む直前だった。図(重ね合わせ検討会の推移)にあるように、ミッションは「基本設計から生産情報を取り込み、着工後初期段階で施工モデルの調整を完了」と明解だ。

 極論すれば、フロントローディングは浪速流の「建てて(儲かって)なんぼ」からすると美辞麗句であり、デジタル技術で質を高めつつ、同時に、いかにして設計段階に生産情報を取り入れ、「施工モデル作成開始」を早めるのか。「Build Twice,Frist Virtual,Then Real」の実践に向けた具体的な施策について探索する。

〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)