BIMの課題と可能性・136/樋口一希/現場作業事務所でのBIM運用・3

2016年12月1日 トップニュース

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 ミッション「基本設計から生産情報を取り込み、着工後初期段階で施工モデルの調整を完了」を実現した竹中工務店の信濃橋富士ビル建替工事(大阪市西区西本町)。本稿第88回「海外のBIM事情3」-関係者を「大部屋(Oobeya)」に糾合し、BIMモデルを協働作成する米国のデベロッパーの先進事例。建築主主導+関係者の常駐を除けば、全員参加でBIMモデルを協働作成する同様の施策だ。


 □「氏育ちの良い設計モデル」に基づき基本設計から生産情報を取り込み施工モデル作成□


 作業事務所での施工モデル作成を円滑にするための「氏育ちの良い設計モデル」を、設計段階で、いかに確保するのか。設計者がBIMソフト「ArchiCAD」で設計(意匠)モデル・構造モデル・設備モデルを作成、保存(施工モデルとの互換のためIFCファイル形式)すると、BIS(Building Information Secretary)と呼ばれる職能がSolibri Model Checkerで個々のBIMモデルを重ね合わせ、自動的に干渉チェックし、設計者に対して干渉箇所の確認メールを送信する。設計者は、Solibri Model Viewerで干渉箇所を目視チェックして確認、BIMモデルを修正する。

 注目すべきは、作業の効率化と正確性確保のため、BISによるSolibri Model Checkerでの自動的な干渉チェックと設計者の目視チェックを明確に分けている点だ。加えて、〔敷地〕・設計(意匠)・構造・設備のコンポーネント(部材・箇所)ごとに干渉(および照合)チェックする項目と対応策を明記した重ね合わせルール一覧表が共有されているため作業ミスも防げる。

 このようにして作成された「氏育ちの良い設計モデル」だからこそ、「基本設計から生産情報を取り込み」、詳細設計段階と重複するように、同時進行的に施工モデル作成が開始できるようになっている。


 □全員参加で施工図担当を兼務するBIMマネージャーが中心となって重ね合わせ検討会を開催□


 作業所には、施工図担当を兼務する、経験豊富なBIMマネージャーが常駐し、施工モデル作成を統括する。具体的には、協力会社の各種アプリケーションとIFCフォーマットを介して施工モデルを統合、「重ね合わせ検討会」ではSolibri Model Checkerを操作しながら、干渉チェックを協働で行い、解決策を合意する。協力会社は、それら合意に基づき、施工モデルを修正し、新規の施工モデルへと更新する。このサイクルを繰り返すわけだ。

 「重ね合わせ検討会」には、設計(意匠)・構造・設備担当の設計者も同席し、設計段階にまで遡りモデル修正する必要が生じた際に、瞬時に対応できる体制も整えている。

 ◇本事例で用いたBIM関連アプリケーション一覧

 ・ArchiCAD:BIMソフト(グラフィソフト)

 ・Solibri Model Checker:3次元モデルチェッカー(グラフィソフト)

 ・BRAIN:構造解析ソフト(自社開発)

 ・Tekla Structures:3D鉄骨図(トリンブル・ソリューションズ)

 ・J-BIM施工図CAD:3Dコンクリート躯体図(福井コンピュータアーキテクト)

 ・RCS:3D配筋図(自社開発・技術研究所)

 ・Rebro:建築設備専用3D CAD(NYKシステムズ)

 ・CADWe’ll Tfas:建築設備専用3D CAD(ダイテック)

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)