BIMの課題と可能性・149/樋口一希/NTTファシリのBIM-FM連携・1

2017年2月14日 トップニュース

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 「建てる」BIMモデルを「管理する」FMモデルに援用するBIM-FM連携。実証実験型オフィス・新大橋ビル(東京都江東区新大橋)を実例として、NTTファシリティーズの指向するBIM-FM連携の「現在」と「次への展開」を読み解く。


 □建築主からはアセット・プロパティマネージメントを踏まえたBIM-FM連携にも注目集まる□


 ファシリティーマネージメント(FM:Facility management)は、80年代初頭から建築のデジタル化と並走して語られてきた。22~24日に開催の「ファシリティマネジメントフォーラム」(日本ファシリティーマネージメント協会主催)でも、BIMが脚光を浴び始めた数年前から、BIM-FM連携をテーマとした講演が目立つようになった。竣工後に建築費を遥かに上回る建物管理コストが必要との共通認識が広がる中で、BIMモデルを連続的にFMモデルに援用し、FMの効果を極大化しようとするのは当然の帰結だ。

 「我が国有数の大家」の動向が報告された『鉄鋼技術』(鋼構造出版)15年7月号「日本郵政のBIM推進における取り組みとは」。建築主=大家の中からも、アセットマネージメント・プロパティマネージメントの側面からBIM-FM連携の可能性に注目が集まっている。


 □意匠・構造・設備の統合モデル構築の重要な契機となった実施設計段階からの施工者参加□


 14年4月に竣工した新大橋ビル。建物規模は鉄骨造(地下RC造)地下1階地上4階建て、建築面積934・46平方メートル、延べ床面積4342・4平方メートル。NTTファシリティーズは、建築主=大家であるとともに、組織事務所として設計監理を行い、施工者と協働する立ち位置を最大限に生かしてBIM-FM連携を視野に入れてプロジェクトをスタートさせた。

 設計業務においては、2次元CAD「AutoCAD」+BIMソフト「Revit」の使用経験を基に、BIM-FM連携のプラットフォームとしても継続採用を決定した。

 基本設計を進める中で課題となったのは設備設計でのBIM運用が未着手だった点だ。BIM-FM連携を円滑に進めるためには、意匠・構造分野とともに、管理業務の大半を占める設備分野を同時並行的に統合したBIMモデル構築が求められる。基本設計と並行して議論を重ね、「設備分野のBIMモデル構築ノウハウをもつ施工者に実施設計段階から参加してもらい協働する」との結論を得た。


 □構造・設備の専用BIMソフトで構築したBIMモデルをIFCファイルを介して統合モデル化□


 施工者の選定では、RFP(Request For Proposal)方式を採用、発注図書としては基本設計段階のBIMモデル(意匠・構造)+設備設計情報(統計図・スペック表など)を提示した。BIMソフト「Revit」の運用経験も豊富で、BIM-FM連携についても提案があった竹中工務店(施工は共立建設JV)を選定、関連して機械設備は日比谷総合設備、電気設備は関電工に決定した。

 実施設計段階に入ると、構造モデルは、竹中工務店と協働し、「Revit」を中心に「Tekla Structures」(Trimble)や「J-BIM施工図CAD」(福井コンピュータアーキテクト)も使いながら作成、設備モデルは、日比谷総合設備、関電工との協力の下、「CADWe’ll Tfas」(ダイテック)を用いて作成した。

 統合モデル作成段階を迎え、関係者間のやり取りが急増すると、セキュリティ確保とデータ共有が困難となった。急きょ、竹中工務店がオートデスク社の「Buzzsaw」を用いたデータ共有システムを構築、IFCファイルを介して統合モデル作成へと進んだ。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)