日本設計は、オートデスク社のクラウド型プラットフォーム「Autodesk Forge」を用いてBIM-FM連携を実践的に高度化する手法を開発した。内容を概説するとともに、プラットフォーム・サービスによるデジタル連携の「BIMの先へ」の可能性を俯瞰する。
□BIMソフト「Revit」を基幹システムとして多様なシステム連携を可能にする環境を構築□
設計のBIMモデルをFMモデルへと援用する際には、既存のワークフローの革新だけでなく、連携機能を持つFMシステム導入の必要があるなど、システム間連携の成否も課題だ。「Forge」は、BIMとFMの間を接続するプラットフォームとして機能する。
「Forge」の全体像は、クラウド上で、さまざまなシステムを接続+構築するサービス・ツール・製品のためのプラットフォームで、特徴的なのは、システム間連携のためのアクセス権の認証機能、多種多様なデータ形式をサポートする変換機能、Webでのビュワー機能、オートデスク・クラウド・ストレージへのアクセス、Web上でAutoCADのプロセスの実行などのAPI(※)を提供することだ。
日本設計は、BIMソフト「Revit」を基幹システムとして、WebサービスAPIをはじめとするサービスやツールなどを活用し、FMシステムにみられるように、多様なシステム連携を可能にする環境を構築した。
□開発環境がWebサービスAPIのため、さまざまなシステム間での連携がWeb上で可能になる□
「Forge」では、比較的、簡易なプログラム開発でクラウド上に保存されたBIMモデルに対してFMシステム側からシームレスにアクセスできる。
BIMとFMをシームレスに連携することで、設計+施工のBIMモデルからFMに必要な情報を簡易に抽出、移行し、FMシステムを構築する多くの時間や手間を縮減し、竣工後、すぐに建物の運用管理ができる。また、写真のように、検索機能で任意の設備機器を呼び出し、3次元モデルで視認しながら、メンテナンス作業することも可能になる。今回、「Forge」活用のBIM-FM連携を、施設管理ソリューション・プロバイダ大手の米国ARCHIBUS社の主力製品「ARCHIBUS」を用いて構築した。
日本設計では、「Forge」活用のBIM-FM連携の検証を進める中で実案件への適用を目指すとともに、アセットマネジメントパッケージの市場供給などを行うプロパティデータバンクとの協働を進めている。今後は、さまざまなFMシステムともBIM-FM連携を構築、実現していく。
□建築と他分野との接触点をより広く接触面へ展開し、設計のBIMモデルの射程をさらに伸延□
会食後にスマホで瞬時に割り勘をしたのを中国で見たある銀行幹部は「将来、銀行機能は不要になる」と危機感を抱いたそうだ。ハワイから帰国した友人は相乗りサービス「Uber」で、タクシーには乗らず、空港までの運賃も約半額で済んだと喜んでいた。民泊サービス「Airbnb」の興隆で、泊まるに特化した建物も登場している。既存の産業にICTを注入して撹拌することで業務革新とともに、新たなビジネスチャンスが生まれている。「業としての建築」も同様の変化を免れないのではないだろうか。
全自動運転を目指す自動車が「Connected Car」を表明するならば、CPUの集合体のような建物は「Connected Building」だし、センシング技術の応用面で「Internet of Things」は「Internet of Buildings」へと普遍できる。設計のBIMモデルを「Forge」上でAPIによってIoTをはじめとするさまざまな領域へと拡張、連携することもできる。BIM-FM連携によって情報は「見える(経済価値)化」し、フィンテック連動で課金を担保したり、バランスシートへと連なる証拠能力も備えるだろう。
「Forge」のようなデジタル・プラットフォームを用いて、建築と他分野との接触点を、より広く接触面へと展開し、工程最上流の設計のBIMモデルの射程をさらに伸延する。「BIMの先へ」と向かう挑戦は始まっている。
※API(Application Programming Interface):異なるアプリケーション(システム)同士を連携することを可能にするために用意された機能、開発環境。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)