BIMの課題と可能性・183/樋口一希/野村不がビューアー運用開始・1

2017年6月22日 トップニュース

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 野村不動産では、7月販売予定の「プラウドシティ越中島(東京都江東区、305戸)」において、日本マイクロソフトのホログラフィックコンピュータ「HoloLens」を活用した新築マンション販売向けビューアー「ホログラフィック・マンションビューアー」の運用を開始した。


 □デジタル化された建物情報は閉じられたディスプレイを飛び出し現実世界と融合して躍動□


 BIMによる建物の3次元モデルが「創る=設計」~「建てる=施工」の工程全般において情報の見える化効果を発揮し、建築の非専門家(顧客=ユーザー)に対しては、建築の専門性を開く強力なツールとなるのは繰り返し論考してきた。

 本稿第165回で福登建設がバーチャル空間体験システム「ARCHITREND VR」の運用を開始し、第170回ではインフォマティクスが「HoloLens」による建築分野向けAR/VRシステム「GyroEye(ジャイロアイ)」シリーズを開発したと報告したように、デジタル化された建物情報は、技術者のディスプレイという閉じた空間を飛び出し、現実の施工現場やマンションの販売予定地などへと活躍の場を広げ始めている。


 □現実空間と仮想空間を融合し複合させることで臨場感あふれる複合現実(MR:Mixed Reality)を実現□


 ヘッドマウント型のホログラフィックコンピュータ「HoloLens」は、目の前の現実空間内に3次元の仮想物「ホログラフィック」を重ねて表示させることで、現実空間と仮想空間を融合、複合させて複合現実(MR:Mixed Reality)を実現する。

 コンピュータ内に人工的な環境を構築し、そこにいるかのような感覚が味わえる仮想現実(VR:Virtual Reality)とは異なり、現実空間を視認しながら、ホログラフィックを表示できるので、現実空間とホログラフィックとを関連付けたシステム構築が可能となる。

 ヘッドマウントディスプレイ(Head Mounted Display)は、先駆的な3次元CAD「PS2(Picture System2)開発で知られるアイバン・エドワード・サザーランド(Ivan Edward Sutherland)が60年代に考案し、初歩的な実験を行った。

 その後、ゲームなどを中心に活用が進んだが、実際にインフォマティクスの「GyroEye(ジャイロアイ)」を装着してみて複合現実の可能性に大きな衝撃を受けた。

 写真は、「プラウドシティ越中島」の建設現場に立ち、「HoloLens」を覗いた際の映像を再現した。現実空間と仮想空間を融合、複合させただけでなく、利用者が動き回ることで得られるフィジカルな感覚も臨場感を高めてくれる。

 次回は、「リアルサイトビューアー」「ホログラフィック外観ビューアー」の二つの機能を概説する。

 なお、23日(午後5時終了)まで東京ビッグサイトで「第25回3D&バーチャル・リアリティ展(IVR)」が開催されているので情報収集に来場するとよいだろう。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)