BIMのその先を目指して・9/樋口一希/清水建設の次世代型生産システム・1

2017年8月8日 トップニュース

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 清水建設では、建設工事現場の生産性向上と各種業務の効率化を目的に、BIMを中核とする情報化施工によって、AIやIoTといった最先端技術を搭載した複数の自律型ロボットと人が協働しながら工事を進める次世代型生産システム「シミズ スマート サイト」を構築、18年初頭には関西での高層ビル案件に適用し、ロボット適用の工種においては70%以上の省人化を目指すと発表した。


 □現場での切迫した人手不足をいかにして補うのかの最強の方策としてのロボットとの協働□


 みずほ総合研究所がリサーチTODAY(17年7月26日)で公表した「内外経済の中期見通し」では、20年の東京オリンピック・パラリンピック後に建設需要が息切れするとの通説的かつ悲観的な見方に対して、必ずしも需要は落ち込まず、急増する更新需要を中心に拡大が期待できるとした。

 一方で、楽観的に見積もっても建設労働者の減少が見込まれ、必要な更新需要の実現には、労働生産性の改善に加え、働き手の確保に向けての取り組みが必要不可欠とも結論づけている。本論では、対策として女性、高齢者の活用や外国人の受け入れを挙げているが、加えてBIMなどの情報化投資をいかに加速するかも喫緊の課題といえる。

 「シミズ スマート サイト」での自律型ロボットと建機は、ブームを伸縮させて作業半径を調整する水平スライドクレーン「Exter」、溶接トーチを自在に操る柱溶接ロボット「Robo-Welder」、天井や床材を2本の腕で巧みに施工する多能工ロボット「Robo-Buddy」、「Robo-Carrier」を核とする4種類の水平・垂直搬送ロボットから構成される。


 □4種類の水平・垂直搬送ロボットから構成され各ロボットはAIやIoTを駆使して自律稼働□


 それぞれのロボットはAIやIoTを駆使し、タブレット操作によりロボット統合管理システムから送信される作業指示に基づき、自己の所在位置を認識しながら現場内を移動し、施工対象物を認識しながら自律的に稼働する。稼働状況や作業結果は、統合管理システムにリアルタイムに記録・蓄積され、タブレット画面上でいつでも確認可能だ。


 □重要な建設生産現場=稼ぐ場でロボットやAIがどのような成果を上げるのか継続して追跡□


 建設工事現場でロボットが活躍し、AIが実用化され、人と協働する。ドラえもんの世界の出来事だと思っていたことが現実となる。建築生産のICT化が避けて通れない現実が危機感とともに露わになったからだ。

 グーグル傘下の英国ディープマインド社の囲碁AI(アルファ碁)が世界最強棋士の柯潔九段を撃破し、国内でもデビュー以来、破竹の29連勝を記録した藤井聡太四段がAIを研究に用いているとAIを巡って巷間、喧しい。

 ウィキペディアでは、人工知能:AI(Artificial Intelligence)とは「人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指す」とあるが正体は今ひとつわからない。

 AIには恐れも感じつつ、囲碁と将棋の世界では人を凌駕したが、囲碁と将棋というゲームそのものをAIは作れないはずだと強弁もしたくなる。「業としての建設」の最も重要な生産現場=稼ぐ場でロボットやAIがどのような成果を上げるのかを追跡していく。

〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)