BIMのその先を目指して・10/樋口一希/清水建設の次世代型生産システム・2

2017年8月10日 トップニュース

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 清水建設が開発したBIMを中核とする情報化施工により、AIやIoTといった最先端技術を搭載した複数の自律型ロボットと人が協働で工事を進める次世代型生産システム「シミズ スマート サイト」を概説する。


 □30階建て+基準床面積3000平米のビル適用で省人化効果(削減率)は合計6000人と試算□


 建設業においても団塊世代を中心とする熟練技能労働者の大量離職が始まり、新たな入職者の確保と生産性向上が喫緊の課題となっている。国土交通省では16年を生産性革命元年として定め、情報化施工を前提とする「i-Construction」の導入に着手した。

 それらの流れを踏まえた上で、清水建設では、業界における情報化施工の先導役になるべく「シミズ スマート サイト」を構築し、自律型ロボットの開発・製造を進めてきた。

 「シミズ スマート サイト」を30階建て、基準床面積3000平方メートルレベルのビルに適用した場合、省人化の効果(削減率)は、揚重・搬送作業で75%=2500人、天井・床施工で75%=2100人、柱溶接作業で70%=1150人、合計6000人近くになり、省人化効果によって個々の建機・ロボットは2~3現場転用することで減価償却が可能との導入効果も定量的に試算し、公開している。


 □全天候カバーと「Exter」の組み合わせは解体工事にも適用可のため案件急増が見込まれる□


 「シミズ スマート サイト」の適用現場では、基礎工事の終了後、仮設足場による外周材と軽量鉄骨のトラスの屋根材から構成、屋根部が防水シートで、外周部はメッシュシートによる全天候カバーで覆う仕組みを採用している。

 全天候カバーの内側に設置した「Exter」は鉄骨の柱・梁(はり)を順次、特定の位置につり込み、「Robo-Welder」は柱を溶接しながら躯体工事を進める。同時に「Robo-Buddy」も下層階から順次、最終工程となる天井、床の設置、施工を進める。「Robo-Carrier」は、夜間に現場に搬入された資材を所定の作業階に搬送・仮置きした後に「Robo-Buddy」の担当作業場所まで搬送する。

 「Exter」は、従来のタワークレーンの持つ屈伸タイプのブームとは異なり、ブームを水平方向に伸縮(スライド)できる機能を組み込んでいるのが最大の特徴。クレーンの能力は、定格荷重12トン、作業半径は最小3メートル、最大25メートルで、200メートルレベルの超高層ビルにも適用できる。

 全天候カバーと「Exter」の組み合わせは、解体工事にも適用可能なため、今後、適用案件の急増が見込まれる。製造委託先はIHI運搬機械で6月末に2機が完成し、関西の高層ビルが初適用現場になる。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)