BIMのその先を目指して・16/樋口一希/竹中のクラウド型遠隔監視システム・1

2017年9月5日 トップニュース

文字サイズ

 竹中工務店では、IoT(Internet of Things)技術を駆使して作業所で稼働しているタワークレーン、工事用エレベータなどの工事用機械の遠隔監視およびデータ収集を行う「クラウド型遠隔監視システム」を開発し、運用を開始した。

 □建設業の生産現場にも適用できるIoTの根幹をなすDigital Twinというコンセプト・概念□

 製造業の技術系メディアでもIoTが話題になり始めたのは直近のことだ。IoTの通信プロトコルが乱立するなどの課題もある中で大手建設会社を中心にIoT技術の積極的な採用が続いている。
 大量生産前提の製造業に対して建設業の生産現場(作業所)はテンポラリー=一時的で、建てる建物も、多くは一品生産だから本来は情報のデジタル化に向かない。米国からは製造業の代表格であるトヨタ生産方式を建設工事に応用するリーン・コンストラクション(Lean Construction)方式も喧伝されるが適用は容易ではない。一方で、製造業に由来するIoTの根幹にあるDigital Twin(デジタルツイン=電子の双子)というコンセプト・概念は、本事例のように建設業の生産現場(作業所)にも適用できる。そのような文脈で捉えると少なからず製造業を出自とするリーン・コンストラクションとの親和性も見えてくる。

 □従来までは人力に頼っていた機械の監視・観測業務をIoT技術によって見える化・データ化□

 建設需要が好調に推移する中、工事用機械の稼働頻度も高まっており、それに応じて機械を保守・運用する管理者の業務負担も増えている。そのような状況下、従来、多くは人力に頼っていた機械の監視・観測業務をIoT技術によって見える化・データ化することが可能となった。
 作業所で稼動する工事用機械は、異常や故障が発生すると、現地からの電話連絡などによる状況報告によって原因を想定し、技術者が現地に到着してからの現物調査、対応となっており、時間的なロスが多く、工程全般への影響が懸念されていた。そのような現状の中、クラウド型遠隔監視システムを使用して複数の作業所における工事用機械の稼働状況をリアルタイムで一元管理し、保守運用業務の効率化を目指す。

 □リアルタイムでデータを取得・分析し結果を作業所にフィードバックするIoTの面目躍如□

 クラウド型遠隔監視システムを使用した工事用機械の遠隔監視により、従来のような事後対応だけでなく、故障の予兆や発生をリアルタイムで事前に把握でき、迅速な検査、修理対応が可能となるとともに、多方面に影響を及ぼす異常や故障によるリスクを低減できる。リアルタイムでデータを取得し、分析した結果をリアルタイムで作業所にフィードバックするIoTの面目躍如だ。

 さらに加えて、クラウド型遠隔監視システムを用いることで異なる製造メーカーの工事用機械からのデータを自律的に一元管理することができ、これまで活用しきれなかったデータを分析・処理することで、作業所の安全、品質、工程、施工計画、環境(省エネ)などの広範囲な分野に展開、建築生産の効率を向上させることができる。
 竹中工務店では、クラウド型遠隔監視システムの積極運用により、収集されたデータをビッグデータ化し、工事用機械の制御、自動化の領域へのより一層の活用を目指している。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)