BIMのその先を目指して・23/樋口一希/空調気流シミュレーションの可視化

2017年9月28日 トップニュース

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 新菱冷熱工業では、ソフトウエア開発専業のソフトウェアクレイドル(東京都品川区)と協働で数値流体解析による気流シミュレーション(CFD※)の結果を装着式ホログラフィックコンピュータ「Microsoft HoloLens(ホロレンズ)」を利用したMR(複合現実)技術によって可視化するシステムを開発した。

 □解析結果が専門的かつ複雑で合意形成に困難が伴う気流シミュレーションの可視化を実現□

 数値流体解析による気流シミュレーションは、既設建物の改修計画から新築建物の工程初期の温熱環境の課題抽出や改善策の提案に至るまで幅広く利活用されているが、一方でCFDの結果が複雑かつ専門的であるため、建築内部だけでなく、建築主(ユーザー)との意思疎通にも困難が伴った。
 それらの問題を解決するために新菱冷熱工業が着目したのが建築分野でも急速に普及が進んでいるMRなどの可視化技術であった。中でも現実空間と仮想空間を融合し、ウエアラブル端末単独で稼働するなど機動性に優れるマイクロソフト社の装着式ホログラフィックコンピュータに着目し、ソフトウェアクレイドルと共同で同製品を活用した可視化手法の開発を進めてきた。

 □既設の中央研究所内に導入して制気口から吹き出す気流を可視化するシステムとして稼働□

 両社では、装着式ホログラフィックコンピュータを利用したシステムの第一弾として、茨城県つくば市にある新菱冷熱工業の中央研究所内の施設に導入、すでに制気口から吹き出す気流を可視化するシステムとして稼働している。これによってCFD気流解析による空気の流れを実際の室内空間で視覚的に確認できるため、関係者間で解析結果をより効率的かつ正確に共有することが可能になる。
 本システムは、外部のパソコンとの接続が不要で単独稼働するため、ホロレンズを装着したまま室内空間を自由に動き回ることができ、任意のポイントの気流を確認することができる。
 関連データやデバイス自体の持ち運びも容易なため、ホロレンズの稼働空間さえ確保できれば、あらゆる場所でCFDの解析結果の可視化が可能となる。
 加えて別途システムなどを用いてCFDの解析結果をMR用に転用する手間が不要なため、CFD技術者であれば導入後すぐに運用することができる。
 今後は、本システムの特徴である「視覚化」の機能をさらに進展させるため、MR技術の機能強化を進めていくとともに、BIMによる3次元モデルとの連携によるCFD解析などと合わせて、ホロレンズを使った仮想体験の提案体制を整える計画だ。
 ※CFD=Computational Fluid Dynamics
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)