BIMのその先を目指して・30/樋口一希/BIMの展開を進める2冊の書籍

2017年11月16日 トップニュース

文字サイズ

 「BIMのその先を目指して」より一層、状況を進めるに際して重要な契機となる2冊のガイド・書籍が出版された。『企画設計段階でのBIM』『施工段階でのBIM』と、それぞれ実務者の手になるもので、これからBIM導入を進める場合だけでなく、導入後の活用促進にも役立つ内容となっている。

 □一新されたユーザーインターフェースと数多く追加された新機能などの解説のため全図版を刷新□

 『ARCHICAD21ではじめるBIM設計入門〔企画設計編〕』は、鈴木裕二、新貴美子、亀岡雅紀三氏の共著でエクスナレッジより12月3日に刊行予定。ARCHICAD18ベースの初版発行の15年2月から3年間を経る中で、ARCHICAD21ではユーザーインターフェースが一新され、新機能も数多く追加された。本書では、図版は全て作画し直し、新機能は可能な限り取り上げて解説している。
 採用した建物モデルはそのままだが、新機能として評価の高い階段ツールや手摺ツールを使ったモデリングの操作方法、従前にも増して便利になった「お気に入り」や「表現の上書き」を使った設定についても解説している。
 アナログ表現の書籍では説明しにくい操作方法∥例えば「マウスを右に動かすと青色水平線のスナップガイドが表示される」といったような新しいインターフェースについても、図を多用してわかりやすく解説がなされている。前書同様、練習用データをダウンロードできるので入手後、すぐに諸機能を実際に試せる。

 □敢えて失敗事例も紹介することでBIM先行企業の挑戦やノウハウがリアルに伝わる工夫も網羅□

 『施工BIMのすすめ|成功につながるBIMスタートアップガイド』。日本建設業連合会(日建連)のBIM展開検討ワーキンググループ(リーダー∥吉村知郎東急建設建築本部BIM推進部プロダクトデザイングループリーダー)が中心となり編集したもので、『施工BIMのスタイル』(14年刊)『施工BIMのスタイル・事例集』(16年刊)に続く施工BIMシリーズの3冊目ともなる。
 シリーズ前2冊がゼネコン(元請)・専門工事会社・設計事務所のBIM担当者を対象に施工段階でのBIM運用を概説しているのと比較して、本書では、これからBIMを導入するゼネコンにとっては「はじめの一歩」となり、導入後、課題に直面しているゼネコンにとっては「社内展開の光明」となるべく編集されている。そのためBIM活用の具体的な進め方とともに、敢えて失敗事例も紹介することでBIM先行企業の試行錯誤とノウハウがリアルに伝わる工夫がなされている。
 本書は、誰もが閲覧できるように日建連のホームページからダウンロードでき、12月5日には無料セミナーも開催される。

 □展開編でもBIM推進のコツ・阻害要因と解決策・BIM展開の事例などで先行企業のノウハウ共有可□

 『施工BIMのすすめ|成功につながるBIMスタートアップガイド』は、「本書の使い方」などを解説した前段に加えて、1.「導入編:BIM入門」、2.「導入編:BIMを広めよう」、3.「展開編:BIMを広めよう」、4.「BIM導入・展開アンケート2016」の全5章から構成されている。

1.「導入編:BIM入門」では、「施工段階で広がるBIM活用」「施工段階からでも十分なメリット」によって施工BIMに脚光が集まっている背景を網羅し、合意形成、干渉チェック、施工図へと工程順に概説、点群データ、デジタルモックアップという比較的新しい技術にも触れている。
2.「導入編:BIMを広めよう」は、BIM導入に際して必要な「もの」「こと」をまとめており、類書では初めて初期トレーニング、費用(導入コスト試算)を定量的に明示したのが注目できる。
3.「展開編:BIMを広めよう」は、BIM推進のコツ、阻害要因と解決策、BIM展開の事例、失敗事例から学ぶとあるように先行企業のノウハウをリアルに共有できる。
4.「BIM導入・展開アンケート2016」は、本書編さんの基礎データとなった情報が広く公開されており、建設業内部だけでなく、ソフトベンダーなどのBIM関係者にも大いに参考となる資料となっている。
〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)