BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・36/樋口一希/積水ハウスの先駆的BIM最新情報  [2018年1月18日]

図のQRコードを読み込みスマホなどで実際のVR作品の閲覧ができる。V-Rayは、Chaos Sofeware社の商標。

 年明け早々に、「BIMの課題と可能性」第82~84回で報告した「積水ハウスの先駆的BIM」の究極の到達点ともいえる最新情報を入手した。ここに至る変遷も振り返り概説する。

 □独自開発のCADシステムとの連動で邸別自由設計のオリジナルプランごとに短時間でVR構築□

 82年中頃、積水ハウスにおいて汎用大型コンピュータ上で稼働する独自開発のCADシステムを見る機会を得た。データベース上のI=Informationと連動し、「製図、積算の大幅な省力化」「建築主には外観を中心とした情報を多量に短時間で提供」するもので、その後のBIMの調査、取材時に常に念頭に思い描くものとなった。
 タブレット上の平面図をなぞると画面に3次元パースが出現した。粗いワイヤーフレーム表現であったが、いつか光源などもリアルに再現したフォトリアリスティックな表現も可能になると開発者と語り合ったのを覚えている。積水ハウスでは、VR(バーチャルリアリティ)技術を導入し、「邸別自由設計のオリジナルプランを360度3D空間体験」できるサービスを開始した。
 特筆できるのは、独自開発のCADシステム「SIDECS(Sekisuihouse Integrated Design System for Customers Satisfaction)」との連動を実現したことで、これによって邸別ごとに短時間でVR空間を構築できる点だ。三十数年を経て当時、思い描いた「近未来」が実現できたわけだ。

 □平面図では伝わりにくい部分を360度3Dの臨場感ある空間で体験してもらい繰り返し確認も可□

 「スローリビング」をテーマに高級な住宅提案を展開している積水ハウスでは、室内と庭とのつながりや四季の移ろいを室内の暮らしに取り込む設計を強みとしている。その際に、季節や時間の変化による室内の雰囲気、隣地建物との距離とその影の影響、樹木による室内に差し込む木漏れ日の雰囲気など、平面図などからでは伝わりにくい部分を360度3Dの臨場感ある空間で体験してもらう。
 顧客には、営業折衝、設計提案時に作成したVR用データを持ち帰ってもらうことで、自宅でスマホを使いVRの臨場感あふれる空間を再体験してもらえるし、面談後にも繰り返し気になる場所を確認してもらうこともできる。

 □ビッグデータ管理型のIT戦略の先にはAI・IoTなどとの連携を視野に入れ始めたに違いない□

 単独で稼働するVRシステムでは、場所や機材などに制約を受けることもあり、図面から高精度の3次元データを制作するには莫大な時間を要するが、本システムでは、CADデータをサーバーに送ることでVR画像に自動変換できる。これによって設計からプレゼンまでのタイムラグを大幅に短縮し、自社内のCADシステムで作業が完結するため、大幅な業務効率化につなげることができる。積水ハウスでは、独自の提案から契約後の工程管理、アフターサービスに至るオリジナルのビッグデータ管理型の強みを最大限に生かせるIT戦略を展開している。
 積水ハウスでは、膨大なデータベースを構築することで、設計・施工・管理の標準化と、敷地や家族構成、ライフスタイルや嗜好などが異なるため同じプランや内外観はほとんどない住宅の特性を両立させるマス・カスタマイゼーション(Mass Customization)を可能にしたといえる。
 その先には、当然のようにAI、IoT技術などとの連携を視野に入れ始めたのかもしれない。ジャーナルの立場で次なる三十数年後の「近未来」についても俯瞰してみよう。〈アーキネットジャパン事務局〉
(毎週木曜日掲載)

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