BIMのその先を目指して・48/樋口一希/静岡県ICT活用工事運用指針

2018年4月12日 トップニュース

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 静岡県では、「ICT活用工事(静岡県の建設現場が変わります!)」と宣言するとともに「交通基盤部発注工事におけるICT活用工事の試行方針」を改定し4月1日より運用を開始、ホームページで対象工事の発注予定を4月下旬と公表した。デジタル運用の動きが地方へも急速に波及する中、発注者の代表格である行政側の動きを通してBIM・CIMの現況を緊急報告する。
 http://www.pref.shizuoka.jp/kensetsu/ke-130/kensetsu-ict/icon-standards.html

 □ICTによる公共工事の履歴データを用いて竣工した土木施設の形状などの計測方法を規定□

 運用開始したのは建設機械などの半自動化やドローンなどのICTを活用して公共工事を遂行する際に、中小組織においても円滑に実施できるようにするための「静岡県ICT活用工事運用ガイドライン土工編(案)」。ICTを用いた公共工事の履歴データを用いて竣工した土木施設の形状などを計測する方法を規定し、基準化した「土工の出来形管理要領」も公表している。
 背景には、建設業においても熟練技術者や現場労働者の不足が急速に顕在化、進行している現状への危機感がある。従来、竣工後の建物や構造物が設計条件を充足しているか確認する際には人力によって検査、計測を行っていた。今回、策定した「ガイドライン」「要領」に基づきICTを用いることで施工中の建設機械の稼働データを正確かつリアルタイムで計測し、現場の生産性も大幅な改善が見込める。
 加えてICT工事に準拠した資料作成には、国土交通省策定の基準を精査する必要があり、中小組織では対応に苦慮していた。「ガイドライン」を用いることで事務作業が軽減され、ICT工事導入の機会増進も期待できる。

 □実施内容・手順の「実施協議」でICT工事を行う際の発注者と受注者との関係を定義□

 「静岡県ICT活用工事運用ガイドライン土工編(案)」では、ICT工事の具体的な実施内容と手順が県などへ提出が義務付けられている資料のひな型や作成例とともにわかりやすく解説されている。
 表の「ICT活用工事に関する基準」を示した「1.適用」に続き、「2.実施内容・手順」では「2.1実施協議」においてICT工事を行う際の発注者と受注者との関係を定義している。受注者希望型では「受注者がICT活用工事を希望する場合に受発注者協議により、ICT活用工事を実施することができる」、ICT導入型では「ICT活用工事の対象範囲及び実施内容を受発注者協議により確定する」と規定されており、対象範囲および実施内容とともに資料として提出書類「協議書」が添付されている。

 □測量計測データと3次元設計データを変更図面とすることで3次元データの優位性を明記□

 「2.2施工計画」では「起工測量及び出来形管理等の施工管理について使用機器及びソフトウエアはその名称と諸元(ソフトウエアはバージョン情報を含む)を記載する」とされ、「2.3工事測量」では「空中写真測量(無人航空機)、地上型レーザースキャナーを用いた測量など」による3次元測量技術に関する定義と基準が明示されている。
 「2.4 3次元設計データ作成」では、「起工測量計測データと設計図書を用いてICT建機による施工及び出来形管理を行うための3次元設計データを作成」「受注者は、3次元設計データが正しく作成されているか確認し、その結果をチェックシート及び照査結果資料に記載し、監督員に提出」とされている。
 特筆できるのは、「2.5.2 設計変更」において「3次元CADソフトウエア等を用いた方法により数量算出を行う場合は、起工測量計測データと3次元設計データを変更図面とする」と3次元データの優位性を明らかにしている点だ。
 「2.6 ICT建設機械による施工」「2.7 出来高管理」「2.8 完成形状の3次元計測」では3次元設計データを用いたICT施工の指針、「2.9 3次元データの納品」では3次元施工管理データの電子納品+完成形状計測点群データのShizuoka Point Cloud DB(https://pointcloud.pref.shizuoka.jp)へのオンライン登録が明示されている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)