BIMのその先を目指して・52/樋口一希/グローバルBIM社の現況を追う・4

2018年5月17日 トップニュース

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 Global BIM(GB)社ではBIMサービスプロバイダーとしての活動を加速化するとともに多岐にわたる施策を通じてBIM普及活動も積極展開している。

 □オープンでセキュアなクラウドサービスの提供で顧客情報の高度な安全性と独立性を確保□

 建物が一品生産で、現場もテンポラリーであり、製造業のようには情報のデジタル化に向かない建設業のユニークな課題解決に向けて、「人・モノ・金」が挙動する施工現場に経営的な視点を導入する「smartCON Planner for ARCHICAD」。GB社からBIM運用支援を受けている建設会社でのsmartCONの採用が相次いでいる。
 鹿島出自のノウハウが凝縮されているsmartCONを競合他社である建設会社へ提供するのに異論があったのは想像に難くない。それにも関わらずsmartCONの提供に踏み切った背景には、流通性に優れるデジタル情報のメリットを活かすためには業界全体でのデジタル・プラットフォームの共有が必須との洞察がある。一方で顧客ごとの情報の独立性を確保するため、クラウドサービス「Global BIM」のセキュアなネットワークによって秘匿性に優れたBIM運用環境の利用を担保している。

 □BIM普及活動の一環としても刊行された書籍には施工BIM運用のノウハウが凝縮されている□

 鹿島BIM推進グループ長兼GB社取締役の安井好広氏の共著『ARCHICADでつくるBIM施工図入門』(鹿島出版会)(※)。施工BIM導入を進める関係者も本書には鹿島出自の施工BIM運用のノウハウが凝縮されていると語っている。
 一例として第2章「ARCHICAD施工図用環境設定」のP34~掲載の「レイヤー、レイヤーセット」ではレイヤー設定のルールが詳細に記されている。具体的には、個々のレイヤー(名)がレイヤーセット1F見上げ図・1F平面詳細図(の場合)とどのような相関関係にあり、どの建物用途と対応しているのかが表記されている。関係者が表組みを見れば、施工BIMの3次元モデルと施工図との構成的な相関関係を理解するとともに、施工BIM導入のメリットも感得できるはずだ。アマゾンでも関連書籍売り上げの上位をキープしている。施工BIM普及への貢献度も高い。
 ※アド設計代表の鈴木裕二氏と鹿島クレスBIM事業部の池田寛氏との共著。

 □企業活動からは一線を画したパブリックドメインな活動を通じて社会課題の解決も志向□

 2月上旬にGB社がネット上で発信した情報がBIM関係者の間で話題となった。2017ITキャリア沖縄による「沖縄IT移住フェス!」にブースを出展し、「沖縄で働きたい方、BIMや最先端技術に触れたい方、私たちといっしょに働きましょう!」と呼びかけたからだ。事業本部長の吉田敬一郎氏によると、期間中、100件を超える問い合わせがあり、優秀な職員の確保にもつながるとのことだ。
 建設業においても人手不足解消は喫緊の課題であり、女性の戦力化も避けて通れない。16年4月1日には女性活躍推進法が施行され、「労働者301人以上の大企業は、女性の活躍推進に向けた行動計画の策定などが新たに義務付けられる」と明示されている。GB社ではBIM業務を在宅で行う「BIMママ」の採用も進める予定だ。
 仕事と育児を両立できる女性にとって働きやすい職場構築は、残業や休日出勤が慢性化しやすい建設業の環境改善にも貢献する。経験豊富な定年退職者も得難い戦力だし、ハンディキャッパーの参加も促進できる。働き方の自由度を増すことで、組織と個人のワーク・ライフ・バランス向上も可能だ。GB社ではBIM普及のその先に、社会課題の解決も視野に入れ活動を進めている。
 GB社の企業活動からは一線を画した上で副社長の矢島和美氏は、COCN(Council on Competitiveness-Nippon=産業競争力懇談会)への参画やbuildingSMART Japan=bSJ(旧IAI)の理事および建築委員長・経営委員会委員長(仮)への就任などを通じてパブリックドメインな活動も進めている。直近では10月16日から19日までの4日間開催の「buildingSMART International,TOKYO Japan-2018」の成功に向けて奔走している。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)