技・人づくり専門工事業ファイル・1/平岩塗装/高卒定期採用開始から12年

2017年11月21日 トップニュース

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 ◇20代後半で大規模現場職長も育つ

 今年で設立56年の平岩塗装(東京都大田区、平岩敏史社長)は、東京タワー(東京都港区)で5年ごとに行われる塗り替え工事を10回にわたって手掛けるなど、数多くの注目物件に携わってきた。平岩社長は、技術の高度な要求に応えるためにも「若手につなげる会社にならなければ」と、12年前から高卒者の定期採用を始め、入社後の育成にも力を注ぐ。大規模な現場を任せられる職長も育ってきた。
 鉄塔や橋梁の塗装で始まった同社の事業は、主力事業に成長した建築分野、さらに塗装で培った技術を生かすコンクリート補強工にも広がっている。
 ゼネコン、橋梁メーカー、メンテナンス会社の下請として、関東一円と拠点のある仙台を中心に東北地区で事業を展開する。年商は18億円前後で推移している。
 協力会社を含めて現場には日々220人ほどが従事しているが、これまで労務を協力会社頼りとしてきた面は否めない。2000年に就任した平岩社長は、「このままでは技術の伝承もままならない」と不安を感じていた。
 職人が高齢化している現状を改善し、将来につなぐ体制をつくろうと、05年に高卒者の新規採用に踏み切ることを決断。ハローワークを通じて求人を出し始めた。そうすると、秋田や岩手など東北地区から応募が来るなど思わぬ反響も。その後も求人を出し続けたことが信頼感につながり、3人程度で推移してきた新規採用数が今春は5人に増加。来年はさらに多い7人の入社が内定している。
 採用した人材はすぐに、加盟する東京都塗装工業協同組合(東塗協)が運営する東京都塗装高等技術専門校に入れる。そこで週1回の技術研修を2年間みっちり受けさせる。並行して、常用工や下請の職長に若手を預け、OJTで現場経験を積ませる。この春、技能工として初めて採用した女性社員は、女性の親方に預けて修行させるなど、安心して働ける環境づくりにも配慮する。
 「大事なのは、一人にさせないこと」。そう話す平岩社長は、社内の勉強会を定期的に催すなどして、仲間意識やコミュニケーションを醸成する機会を設けている。
 新規採用組の定着は半分程度だが、その中から20代後半で超高層ビルや大学などの大規模現場をまとめ上げる職長も育ってきた。面倒見も良く、若手のリーダーとして活躍する姿に「採用してよかった」と胸をなで下ろす。
 平岩社長は、採用予定者の自宅を一軒ずつ回り、両親に会社や仕事の内容を説明する活動を続ける。「安心してお子さんを預けてもらう」ための配慮だが、いざ辞めたいと言い出したときに「会社にとどまるよう説得してもらえるのでは」との期待も込める。
 2020年東京五輪以降も建設需要は続きそうだ。平岩社長は「人を採用し、育てることが未来の発展につながる」と人材への投資を精力的に行い、技術を受け継いでいける体制を築いていきたい考えだ。
 (専門工事業の技づくり、人づくりの取り組みを紹介します。)