技・人づくり専門工事業ファイル・9/手塚工務店/「仲間」との連携重視で業績伸ばす

2018年3月27日 トップニュース

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 ◇人材・確保育成の協力も志向

 手塚工務店(東京都世田谷区、手塚利行社長)は、今年で設立36年となる型枠の専門工事会社だ。手塚社長は1996年、2代目に就任。売上高が4億~5億円で推移していた会社を、20億円前後が確保できるまでに成長させた。年齢の近い同業経営者との協力を重視してきた経営手法を継続。同時に人材の確保・育成に向けた取り組みでも「1社では難しいことに共同で取り組めるようにしたい」と話す。
 東京を拠点とする同社は、川崎市内に神奈川営業所も構える。準大手・中堅ゼネコンや、地域の建設会社の1次下請として現場施工に当たる。「職人を切り盛りするには、常に120%の受注量が必要」という手塚社長の考え方で営業を展開した結果、就任から22年で売り上げ規模を4~5倍に伸ばすまで成長を遂げた。
 現在47歳の手塚社長は、会社を成長させることができた理由を「同業の仲間との連携」だと話す。さまざまな場面で同世代経営者ら仲間の協力を得られたことが、大きな力となった。
 現在の社員数は職人を含めて50人。インドネシア、ベトナムからの技能実習生を受け入れ、さらに2~3年の在留が認められる外国人建設就労者と合わせて、15人の外国人材が在籍する。
 同社に協力する2次下請は型枠大工と解体で約20社。マンションや学校、老人ホームなどの建築工事に対して、常時120人体制で現場作業に取り組む。現状では「職人の数は足りている」と話す手塚社長だが、いずれベテランが退職しても、現状の受注量を維持したいと考えている。そのためにも若い人材を確保し、定着してもらえるようにすることを重視する。
 ハローワークを通じて高卒者向けの求人票を出しているが、中途を含めて入ってくるのは毎年1~2人。半分が定着すれば良い方だという。若手定着のために同社では、社員寮の確保や処遇の改善、資格取得に対する金銭面のバックアップなどにも取り組む。現場に配属する時も、以前であれば「親方について雑用をこなしながら、『見て覚えろ』というやり方で良かった」が、今はできるだけ仕事に興味を持ってもらえるような工夫が欠かせない。
 若手人材の確保に向け、高校などに出向いて業界の仕事をPRする出前講座や合同就職説明会の開催、さらに技能研修と入職前後の一連の取り組みが必要と考えているが、1社だけの取り組みには限界がある。首都圏以外では、単一の職種や複数の職種の組合などが合同でこうした活動を展開しており、「東京でも同様の取り組みが必要だ」と思っている。
 東京都中小建設業協会(都中建)と連携した新入社員研修事業に、所属する東京建設工業協同組合を代表した立場で参画しており、これを「さらに発展させて技能教育にも」という思いもある。同業他社と連携した活動の強化には、組合員の増強も欠かせない要素。「草の根運動として組合員となる仲間を募っていくことが、やがて『数は力』となる」と力を込める。
 型枠業界が一致団結して適正な価格を提示するなど、価格変動の激しい仕事の安定化に向けた活動の必要性も訴える。