技・人づくり専門工事業ファイル・12/練成工業(東京都練馬区)

2018年4月24日 トップニュース

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 ◇目標は社員職人30人体制/多能工による耐震補強一式も展開

 1987年に創業した型枠工事の練成工業(東京都練馬区、岡田宏章社長)は、鹿島の重点協力会社としての事業展開で年間11億円ほどを売り上げる。地場ゼネコンを顧客に同じスタッフで営む姉妹会社の練成(同)と合わせた売上高は約15億円。7年ほど前から手掛ける多能工による耐震補強の一式施工や海外製品を用いた提案活動など、従来の型枠工事にとらわれない事業にも力を注ぐ。
 父親である先代の後を継いだ岡田社長が就任したのは2007年。鹿島の支援で厳しい時期を乗り越え、年商10億円を超える専門工事会社に育ててきた。
 工事管理や事務、資材センターの職員と直用大工12人を含めた社員は現在27人。練成会と呼ぶ協力会所属会社と共に型枠大工と解体を含め、関東を中心に常時150人体制で現場施工を担う。
 人材採用に向け、社員がOBの埼玉県立大宮工業高校に毎年訪問するほか、退職自衛官の獲得へ鹿島事業協同組合メンバーとして合同企業説明会にも参加しているが、「若者の確保には正直苦戦している」。
 それでも型枠工事会社として「本物でありたい」と考える岡田社長は、工事管理だけではなく、職人を抱えることによる苦労を感じるべきだと社員職人30人体制の早期達成という目標を自らに課す。未経験者は入職後、富士教育訓練センター(静岡県富士宮市)で行われる1カ月の型枠基礎コースに送り込み、その後は現場OJTで一人前の職人となるよう育てていく。
 岡田社長は、早い段階から型枠施工だけでは将来の経営が成り立たなくなると危機感を抱いていた。耐震補強の一式施工では、アンカー打設、配筋、スパイラル配筋、型枠組み立て、コンクリート打設、グラウト注入などを多能工が手掛ける。この取り組みを一段と充実させながら、海外製品の使用を売り物にした提案活動も積極推進していきたいという。
 外国人材としてベトナムからの技能実習生を9人、再入国で日本の現場に従事する外国人建設就労者を4人の計13人抱えており、帰国後の受け皿となる現地法人の設立も計画。日系ゼネコンの現地施工に携わるほか、現地資本と共同した開発案件に携わるなどの青写真を描いている。帰国後も良好な関係を築けるよう、技能実習期間中は「バーベキューや飲み会を催したり、一緒に富士山へ行ったりする」などの活動にも余念がない。
 海外展開を視野に入れた活動もその前提となるのは、国内での安定した基盤の確立だ。業界を挙げた活動となっている社会保険加入促進では、「まじめに取り組む会社が不利益を被らないようにしてほしい」と行政にも進言している。
 建設キャリアアップシステムについては、職人の処遇改善と、専門工事会社が評価される仕組みの構築による「職人を育てて、資格を取らせ、報酬もきっちりと支払う会社が力を付けて活動できるようになる起爆剤となれば」と大きく期待している。そのためにも中途半端な仕組みとせず、「業界にとって実のある形にしてもらいたい」と訴えている。