BIMの課題と可能性・24/樋口一希/鉄骨BIMで状況をブレークスルー・3

2014年7月10日 トップニュース

文字サイズ

 鉄骨BIMソフト「KAPシステム」の運用メリットをファブリケーターと設備業者との関係に即して報告する。


 □困難を極める2次元図面に基づき行われている鉄骨本体(躯体)と設備情報との調整□

 構造設計システムとの連携では通り芯、階高情報、部材配置情報、部材断面形状が取り込み可能だ。3次元データの「見える化」効果がより明快な設備BIMとの連携を紹介する。

 設備配管を梁下に通すのであれば問題ないが、鉄骨にスリーブを開ける場合、ファブリケーターと設備業者との調整は煩雑だ。

 従来は、ファブリケーター作成の2次元鉄骨伏図が設備業者に提供され、設備業者が伏図からスリーブの位置を決定、伏図や断面図に加筆してファブリケーターに戻す。ファブリケーターは干渉チェック、貫通条件などに基づきスリーブ位置などの情報を判定し、設備業者に返す。この工程を繰り返すが、本体の設計変更が発生、工期遅れや作業増により、利益率低下の主原因となっている。

 鉄骨BIMでは、3次元データにより、スリーブ位置を特定、自動で穴開けし、補強方法までも確定する=図〈1〉。※主要な構造設計システム、設備BIMソフトとシステム連携可。


 □初期段階でスリーブ情報を設備業者に戻し、手戻り激減と調整作業の質的向上を実現□

 設計図書に基づきスリーブ貫通基準を鉄骨BIMソフト「KAPシステム」に入力し、鉄骨伏図にスリーブ貫通基準を表記すると共に、鉄骨本体+スリーブの可否判定の結果を3次元表示する。これらの3次元・2次元情報を基に設備業者はスリーブを決定、設備業者からのデータを鉄骨BIMソフト「KAPシステム」上の3次元モデルと統合する。

 図〈1〉を見れば明らかなように、設備業者側では鉄骨本体(躯体)との干渉チェック、スリーブ配置のNGゾーンを工程初期の早い段階で把握でき、ファブリケーターとのやりとりを含めて、設備施工の手戻りの大幅削減ができる(清水建設特許出願中「鉄骨加工支援システム及び鉄骨加工支援方法」)。

 「KAPシステムと連携するEGリング(建築構造物の鉄骨梁貫通補強)工法を開発した。梁に設けた円形貫通孔に、外周に45度傾斜の開先面をもつEGリングをはめ込み、外側からの部分溶け込み溶接で接合する。これによって補強材料の低コスト化、施工期間短縮が図れる」(片山ストラテック鉄構事業部副事業部長・熊谷和彦氏)


 □新たな図面への変革となる可能性をはらむ、3次元建物モデルと2次元図面標記の統合□

 BIMモデルとは、3次元建物モデルと2次元図面(データ)をも包含したものと考えてみる。2次元図面(データ)には3次元データでは表現しない寸法線など重要な情報が記されているからだ。この概念を具現化したBIMモデル標記に片山ストラテックのウェブサイトで遭遇した=図〈2〉。KAPシステムから3D伏図を自動生成し、マウス操作で前後天地左右に動く。一般的なブラウザで稼働するのでタブレットでも閲覧可だ。現場での確認作業の質的向上に威力を発揮する。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)