BIMの課題と可能性

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BIMの課題と可能性・32/樋口一希/組織論としてのBIM運用・3  [2014年9月11日]

BIM導入後の設計者の実務時間の割り振りを検証

BIMソフト「GLOOBE」の図面作成ツールとしての実際=「80%自動描写+20%追記」(千都建築設計事務所提供)

 実施設計までBIM運用が可能との約2年間をかけた実証結果に基づき、組織としてBIM化を加速している千都建築設計事務所(千葉市美浜区)。建築技術者55名規模の組織事務所として「大上段からのBIM」ではなく、実利に徹したBIM(GLOOBE:福井コンピュータアーキテクト)運用を行っている。

 □設計の「作業」時間を半減し本来のデザイン・プランニングへと積極的に振り向ける□
 BIMを『コミュニケーションツール』として捉え、設計技術者間の情報交換の見える化、施主との間の合意形成の見える化に効果を上げてきた。BIMの『図面作成ツール』としての優位性については2次元CAD状況と比較して定量的に実証している。
 BIM導入を進める中で、設計者の賛同を得るためには、ひたすら行う検図などの「設計の作業」時間(コスト)の短縮がいかに可能かを実証する必要があった。基本設計ではSketchUpで3次元モデル作成+プレゼン、JW-CADで作図していたが、相互のデータ連動はなく、確認ミス+時間ロスもあった。デザイン・プランニング20%、資料作成10%、行政協議10%、作図チェック60%と設計者の実働時間の現状分析も行っている。
 BIM導入の検証の結果、3次元モデル+2次元図面(データ)が連動するBIMによって「作図チェック60%→30%、デザイン・プランニング20%→50%」への改善が明らかとなった。

 □BIM側での作図設定を強化することで2次元図面の「80%自動描写+20%追記」実現□
 本連載で何度か触れたが、BIMによる3次元モデルから実施設計段階の2次元図面(データ)を作成する際には課題も散見できる。図にあるように、20%の追記(赤字部分)作業は主に「凡例」などのテキスト部分だ。それらデータはBIM側では3次元モデル化しない(できない)。
 BIMソフト側での作図機能の設定など試行錯誤をする中で、「80%自動描写+20%追記」という明示的な結果を得た。
 設計者は3次元モデル+2次元図面(データ)との融合を現実的なBIMモデルと捉えるようになり、「作図チェック60%→30%」+2次元図面の「80%自動描写+20%追記」によって「デザイン・プランニング20%→50%」へと専念する環境を得た。

 □実施設計を建築設計事務所の主戦場と捉え、BIMでの建設会社との協業も視野に入れる□
 BIM運用は、構造、積算、環境などの他工程と連携する『コラボレーションツール』のフェーズへと向かいつつある。
 「技術協議方式」。ネットで検索すると、議論がやかましい新国立競技場に採用される作業形態のことで「工事を着実に進めるため、実施設計段階から施工予定者が設計に関与する」方式とある。
 大手建設業では、設計・施工を標榜する中で、設計から施工(さらに管理・運用)まで一連のBIMデータを援用する能力を高めつつある。建築の外野からの発言と割引いて欲しいがBIM化の進行と共に、建築設計事務所は基本設計=「絵」だけを描くことになりかねない。
 千都建築設計事務所のBIM導入の背景には、建築設計事務所の将来への危機感がある。地域性、組織規模など『コラボレーション』できる建設会社とのBIMを用いた連携を進めようとしている。
 次回はBIMと連携する建築概算見積もりソフト「CostNaviPro」(建築ソフト製)についてレポートする。
 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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