BIMの課題と可能性・33/樋口一希/概算見積もりソフトとBIMの連携・1

2014年9月18日 トップニュース

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 BIMモデル=3次元データを他のシステムと連携して有効利用する事例として、建築ソフトの概算見積もりソフト「Cost Navi Pro」について報告する。


 □建築の素人(施主)にも「建てる前になぜ、建築費(コスト)が分かるのか」は曖昧模糊□


 筆者のキャリアスタートは価格情報誌「積算ポケット手帳」。工事業者を訪ね、リアルな「材工価格」を調査した。モデル建物の図面を見ながら電卓を叩いている積算事務所出身の同僚に質問した。

 「基本設計図面だけで、どうして建てる前の建物の積算ができるのか」。

 「経験上、建物の種類、規模によって統計的な積算基準を持っているし、施工時に必要な情報もつかんでいる」との回答。頭の中で設計から施工に至る情報を『フロントローディング』し、『プレコンストラクション』していたことになる。

 「この建物を建てるためにはいくらかかるのか」。関係者全てにとって切実な課題なのに、建築の素人の筆者からしても、「建てる前にどうして積算できるのか」=積算業務とは曖昧模糊としている。概算見積もりソフト「Cost Navi Pro」は、それらの課題解決を目的に開発された。


 □「絵」としての設計図面から拾えない積算データと未確定条件を補って自動積算する□


 「設計の進捗と積算情報」との現状の相関関係をみてみる。建物の企画・計画段階では、積算に必要な建物情報は極めて不十分だ。基本設計、実施設計と進捗するに従い、建物情報は拡充され、実施設計終了時には全体の建築工事費算定が概ね可能となるが遅すぎる。その課題を解決し、企画計画段階で積算(コスト検討)するために「Cost Navi Pro」はさまざまな機能を装備している。

 意匠設計者は積算に必要なデータを全て描かないし、積算に必要な条件の多くは未確定だ。「Cost Navi Pro」は積算に必要な設計データを自動設定し、未確定な条件にも適切な値を設定する。具体的には、座標(CAD/BIM)データから数量を自動積算し、内包している構造計算機能によって断面設定も行う。

 このように、統計値によるのではなく、対象建物を『プレコンストラクション』し、自動積算することで、概算精度6%以内の高精度、同社検証物件の標準偏差で最大10%程度を実現している。最も重要なのは、施主をはじめとする関係者全てが一式表記でない詳細な内訳書によって「積算根拠を共有」し、「積算に至るトレーサビリティー」を確保できることだ。


 □図面には描かない仮設、諸経費等のデータ+独自調査による市場単価の収録で高精度確保□


 積算業務では設計図面からは参照できない=『不足データ』をいかに補うのかも求められる。「Cost Navi Pro」は、仮設、諸経費等、仕上げの役物などの算定にも対応している。

 統計値ではなく、対象建物を『プレコンストラクション』し積算するためには、拾い出し対象の部材(単価)も必要だ。独自調査(1年1回改定が基本)による1800件の市場単価を収録+自社単価の登録も可能としている。

 次回は「Cost Navi Pro」とBIMとの連携について報告する。〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)