BIMの課題と可能性・154/樋口一希/コマツのICT建機とCIM・2

2017年3月7日 トップニュース

文字サイズ

 広く土木のデジタル化を促進する国土交通省のi-Construction。16年4月から実施の「新たに導入するための15の基準及び積算基準」においても「ICT建機による施工」が中核的に明示されている。ICT建機開発の経緯や背景を通してコマツの「スマートコンストラクション」(SMARTCONSTRUCTION)が土木建設業に与えるインパクトを探る。


 □ICT建機開発への端緒は01年から標準装備を開始した機械稼働管理システム「KOMTRAX」□


 「KOMTRAX」(Komatsu Machine Tracking System:コムトラックス)を用いると、どの車両が(世界中の)どこにあり、エンジンは駆動しているか停止しているか、燃料はどの程度消費しているかなどの稼働状態を遠隔地から把握できる。当時、多発した建設機械の盗難、ATMの破壊強盗への対策が急務との背景もあった。

 中国市場への進出を競う中で「KOMTRAX」は他社との差別化にも貢献した。車両ごとの個別情報がリアルタイムで把握できるため、新規顧客への与信付与が容易となり、リテールファイナンス利用による購入機会の拡大へとつながったためだ。

 この段階でコマツは「情報の見える化」がファイナンスと連動するFintech(financial technology)の萌芽(ほうが)を手に入れたに違いない。コマツは、「KOMTRAX」の次なる革新へと舵(かじ)を切っていく。


 □車両ごと1対1の「モノの情報」をICTでさまざまに援用できる「コトの情報」へ革新□


 エンジンの稼働情報と移動軌跡などを組み合わせて分析すれば、「エンジン稼働時間150時間×実質作業時間100時間」といったムダも定量的に把握できる。顧客への「見える化」を通して、50時間分の無駄を削減する省エネ運転を提案すれば良い。使用部品の経時的な履歴情報を用いれば、部品交換の最適なタイミングも提示できる。

 「KOMTRAX」成功の最大の要諦はシステムを「標準装備」とした点だ。車両ごとに、1対1で「見える化」されたモノ=車両の情報は、通信機能を用いてデータセンターにビッグデータ的に集約、蓄積することで、「活用できるコトの情報」へとさまざまに援用できるからだ。

 「KOMTRAX」は、誕生から17年を経た2016年6月までで搭載台数が全世界で累計42万台を超えた。


 □ここに至る経緯を経て建設機械全般に跨(またが)るサービス・プロバイダーへと変貌したコマツ□


 コマツが建設現場のあらゆる情報をICTでつなぎ、安全で生産性の高い現場を実現する「スマートコンストラクション」(SMARTCONSTRUCTION)をリリースしたのは15年2月だ。

 新たに開発したクラウド型プラットフォーム「KomConnect」(コムコネクト)を中核に、現況の高精度3次元測量、施工完成図面の3次元化、地下埋設物など変動要因の調査・解析、施工計画作成、ICT建機による高度に知能化された施工、完成後の施工データ活用までをサポートする。次回は、関連ソフトウエアとの連携なども含めて具体的な運用の実際を報告する。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)