JAPICの緊急提言から・3/PPP・PFIを活用した防災対策

2021年3月19日 トップニュース

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 ◇Park-PFIを応用した河川管理

 新規のインフラ投資が必要となる一方で、高度成長期以降に集中的に整備されたインフラの老朽化対策も喫緊の課題である。ただ、少子高齢化に伴う税収減や社会保障費増加に加え、足元の新型コロナウイルスへの対応などもあり、財政は一段と厳しさを増している。こうした中、インフラの新規投資や維持更新と公的費用の抑制を両立させるべく、PPPやPFIを活用した民間資金や新技術の導入が期待されている。

 では、治水対策でPPPやPFIをどう活用すれば良いのか。一つの案としては「Park-PFI手法」の応用がある。都市公園はこれまで、設置管理許可制度を用いて民間事業者による飲食店等の公園施設の設置・管理が可能だった。Park-PFIはその仕組みを一歩進め、民間事業者を公募で選定する。事業者は施設から得る収益を公園整備に還元することを条件に、設置管理許可期間の特例を10年から最長20年に延長したり、建ぺい率を10%上乗せしたりする優遇措置が受けられる。

 この仕組みを河川敷地にも適用してはどうか。すでに民間事業者にバーベキュー場や川床等の占用許可が認められ、大阪市淀川の北浜テラスや首都圏外郭放水路の施設見学などの事例もあるが、現制度では占用許可は10年以内となる。Park-PFIと同様に、河川敷利用でも民間事業者の投資回収をより確実にするために、許可期間等の特例措置を設けることで、民間資金を河川の維持管理に呼び込めるのではないか。

 二つ目は「高台まちづくり」を進める上での公的主体と民間の役割分担、リスク分担をどう考えるかだ。民間事業者は一般的に開発案件での土地取得や工事遅延等の建設中のリスクを取ることを嫌う。高規格堤防等の盛り土で高台となった川裏ののり面を宅地などとして利用する高台まちづくりは、多数の住民の権利調整が必要で事業が長期化しやすい。事業の円滑化には公的主体の先行的な関与が望ましい。

 大和川左岸(大阪府堺市)の三宝地区での高規格堤防との一体的なまちづくりでは、住宅密集地に約300人の住民が居住しているが、住民の仮移転を伴う長期間にわたる事業を、土地区画整理事業に強みを持つ都市再生機構と、住宅の建設資金融資に関するノウハウを持つ住宅金融支援機構が連携して事業を進めている。河川整備は公共工事という先入観があるが、自治体や都市機構、住宅金融支援機構などの公的主体とデベロッパーなどの民間事業者が適切に役割とリスクを分担することができれば、民間事業者が協働する河川整備もできるのではないか。

 防災は「非日常」な事態への対応だが、民間資金を導入するには「日常」の魅力を高めて、その魅力を裏付けとして民間事業者が収受するキャッシュフローを創出し、その一部を河川整備や維持管理に還元させることが肝要となる。水と安心して親しむことができる「日常空間」の創出が、河川整備における新たな資金調達につながると考える。