市況変動/価格高騰が建設業界の利益圧迫/納期に遅れ、発注者との交渉急ぐ

2022年4月28日 トップニュース

文字サイズ

 建設資材価格の高騰がゼネコンや建設関連各社の利益を圧迫している。鋼材などの値上がりを受け、各社とも発注者などとの価格転嫁に向けた交渉を急ぐ。納期の遅れといった影響が出始めている。国際情勢もあり状況は長引くと予想されている。政府は26日、原油価格・物価高騰などに対応した「総合緊急対策」を決定し、公共発注者らに適正な取引を要請した。価格の急激な変動への対応や取引先との対話など、今後の課題が浮き彫りとなってきている。
 「自助努力だけではどうしようもない」。大手ゼネコンの関係者は価格高騰への対応に限界を感じている。これまでも資材の値上がりを価格転嫁し、発注者の理解も得ながら早期発注などでしのいできた。しかし、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻で「見通しが立たなくなってきている」という。「高騰分は(価格転嫁を)交渉しているが、厳しい」と漏らすのは別の大手ゼネコン。鉄骨などの納期が「通常の倍近くかかる」ことも懸念材料だ。資材価格高騰を理由に業績予想を下方修正するゼネコンも出てきている。
 道路舗装大手の関係者は「原油価格の高騰はボディーブローどころではない」と苦しい現状を明かす。原油価格の高騰で舗装材の原料となるストレートアスファルト(ストアス)も高騰している。道路舗装業界は原油価格が高騰するたびに業績を左右されてきた。「化石燃料に依存しない舗装材の開発を本格的に考える必要がある」と指摘する。
 総合緊急対策ではストアスに関する価格転嫁についても別途記載された。業界関係者は「企業努力では転嫁できない、この異常な状況を理解してもらえた」と安堵(あんど)する。
 銅やアルミの値上がりに悲鳴を上げるのは設備工事業界だ。設備大手の関係者は「銅の値上げはケーブルの値上がりになるため非常に苦しい」と漏らす。この会社の主要取引先の8割で納期が遅れており、そのうち7割は「改善の見通しが立たない」という。
 一連の価格高騰を受け、大手ゼネコンの関係者は「サプライチェーン(供給網)がガラッと変わり、国内回帰になるのではないか」とみる。発注者との対話も重要だ。「値上げイコール悪ではない。効率化やコストダウンも大切だが、必要なことを言える業界にしないといけない」(大手ゼネコン)。