デジタルで建設をDXする・76/樋口一希/BIM・CIM配筋モデル自動生成

2022年9月22日 ニュース

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 大林組、建設技術研究所、八千代エンジニヤリングの3社は、設計者がパラメーターを入力することによってボックスカルバートのBIM/CIM配筋モデルを自動で生成し、設計・施工から維持管理に至るまでデジタル連携できるツールを協働して開発した。

 □作業者が人的に3次元CADを操作することなく構造物と配筋のBIM/CIMモデルを自動生成□
 土木の施工現場では従来、2次元図面を主体に工事が進められていたため情報の見える化に課題が残り、作業者間での意思疎通の齟齬(そご)や解釈の違いによる再確認や手戻り作業が多く発生、生産性の向上を阻害する要因となっていた。3次元CADを導入するケースも増えているが、BIM/CIMモデルを作成するにしても、モデル構築に多大な時間を要しており、3次元化の効果も多くの場合、複雑な配筋状況の見える化のみに限定されていて、設計条件や留意事項などの重要な情報を施工段階に引き継ぐことができなかった。
 今般、開発されたツールは、鉄筋径やかぶりなど鉄筋の3次元モデル構築に必要な最低限のパラメーターを入力することによって、設計者と施工者双方が人的に3次元CADを操作することなく、構造物と配筋のBIM/CIMモデルを自動生成できる。それよって配筋の3次元モデル化を行う際の大幅な省力化に加え、設計段階の情報を施工段階へ確実に引き継ぐことが可能となり、安全で高品質な施工を実現している。合わせて、設計会社と施工会社が双方の知見に基づき共同開発しているため、設計者、施工者自らがそれぞれの業務意図に基づき活用できるモデルを作成でき、さらなる建設DXの展開が可能となる。

 □パラメーター入力での配筋モデル作成で3次元CADと比較して所要時間を10分の1以下に短縮□
 設計者が3次元モデル構築に必要なパラメーターを入力する作業の開始時点から開発ツールの具体的な挙動を見てみる。〈設計入力ファイル〉に構造計算ソフトから得られた躯体形状・鉄筋径・端部形状・かぶり・間隔などの必要最低限のパラメーターを入力して〈モデル作成〉を実行することによって、3次元CADがバックグラウンドで起動して最初に構造物モデルと配筋モデルが自動生成される。
 作成されたモデルを引き続いてAutodesk Navisworks(※)に読み込むことによって、ボックスカルバートの統合モデル(BIM/CIMモデル)が生成される。このように3次元CADを人的に操作することなく、パラメーターの入力だけで配筋モデルを迅速に作成できるため、3次元CADを用いた場合と比較しても所要時間を10分の1以下に短縮でき、大幅な省力化を実現している。

 □設計から施工を経て維持管理に至る各ステージでのモデルの作成・修正作業の省力化を実現□
 設計から施工を経て維持管理に至るBIM/CIMモデル活用の実際を見てみる。設計者が作成したBIM/CIMモデルを引き継いだ施工者は、現場条件の変更などに応じて〈施工入力ファイル〉に配筋パラメーターを入力し、BIM/CIMモデルの修正を行っていく。これによって設計から施工、維持管理の各ステージでのモデルの作成・修正作業が省力化され、設計条件やその他の留意事項などを設計段階から施工段階へ確実に引き継ぐことが可能となっている。
 (※)Autodesk Navisworks=オートデスク社製のレビューソフト。レビューとは設計計画の見直しのこと。構造や設備などさまざまな3次元モデルを重ねて表示できるので、干渉チェックや完成イメージの共有がより確実に行える。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)