スコープ・森林活用/山下PMCが講演会、日本発のイノベーションを

2024年5月30日 企業・経営 [12面]

文字サイズ

 山下PMCは27日、クライアントやパートナーと交流するイベント「2024YPMC交流会」の講演会を東京都内で開いた。テーマは「森と木×建築・まちづくり×イノベーションの可能性~世界有数の森林資源を有する我が国のポテンシャルと持続可能性~」。金融やデベロッパー、建設DXの各分野の有識者が登壇し、持続可能な社会に向けて求められる共創の在り方などを議論した=写真上。
 □持続可能な社会へ/ヒントは「木造」□
 冒頭、丸山優子社長が「QCDS(クオリティー、コスト、デリバリー、サービス)だけでは不十分で、環境のE(エンバイロメント)も加えることを宣言した。答えが出ているわけではないが、日本は木造が大きな解またはヒントだと思っている」と語った。
 パネルディスカッションでは、コーディネーターを沢田渉氏(BrightenJapan代表取締役兼最高経営責任者〈CEO〉)が務め▽吉高まり(バーチュデザイン代表理事)▽山本有(三井不動産サステナビリティ推進部長)▽野呂侑希(燈代表取締役兼CEO)-の3氏が登壇した。同社の顧客ら約420人が参加した。
 沢田氏は三井住友銀行専務執行役員などを経て、次世代にサステナブルな社会を引き継ぎたいという問題意識から、企業再生支援を行うBrightenJapanを昨年創業した。森林が持つ多面的な役割に触れ、「日本社会のサステナビリティを考える上では、森林をどう生かして循環的なものを作っていくかが大事だ。(森林関係の)プレーヤーに付加価値を与える経済圏を作らないといけない」との見方を示した。金融スキルを生かして「森林サーキュラーエコノミー(循環経済)実現に一隅を照らす活動を続けたい」と語った。
 吉高氏は、カーボンクレジットなど環境価値を金銭化する取り組みを20年以上手掛けてきた。こうした経験を踏まえ環境価値のマネタイズの必要性を話した。注目するキーワードに「ネイチャー・ベースド・ソリューション(NbS)」を挙げ、「自然資本が気候変動で破壊されている。自然資本を守るためにお金を回すのがNbSだ。二酸化炭素(CO2)の吸収源では森林が最もポテンシャルがある」と説明した。
 「とかくCSR(企業の社会的責任)の感覚が抜けない企業が多い。脱炭素先行地域では地域資源を活用した地域創生のためにカーボンニュートラル(CN)に取り組んでいる。『いかに化石燃料を使わないか』という世界ではない」と強調し、意識変革の重要性を訴えた。ネイチャーポジティブ(自然再興)やTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)など投資家が評価する動きも説明した。
 山本氏はデベロッパーの立場で登壇した。環境との共生などを柱にした長期ビジョンに触れた上で、利用されていない人工林や伐採後に再造林されていない人工林が多い現状を指摘し、「社会的課題に取り組んでいる」と語った。苗木を植え適切に育てて森で採れた木を使うというサイクルを回す「終わらない森創り」の取り組みを説明。「デベロッパーなので使うことに重点を置いている」と述べ、日本最大かつ最高層の木造賃貸オフィスビルのプロジェクトなどを紹介した。
 DXの観点から変革の方向性を示したのは、AIを駆使した建設DXソリューションを展開している野呂氏。「森林のエコシステムを変えていくには技術開発が必須になる」と指摘し▽森林の把握の効率化・高度化▽設計でのAI活用による資材利用の最適化▽木材・木造建築自体の研究-の三つを具体例に示した。ドローンによる森林の測量データから、樹木の幹や葉をAIで自動分類して本数の計測や植生を把握する技術を紹介し「森林の把握を効率化できる。災害対策にも応用できる」と話した。
 「日本文化の粋や風流というところには、いつも木とか森林が登場していた。森林は日本固有の財産で強みだ」との認識を示し、最大限生かして次世代の社会を作っていく必要性を語った。「失われた30年から取り戻す30年を作りたい。世代を超えて成し遂げたい」と呼び掛けた。
 沢田氏は「どういう貢献をするかを考えて実践するきっかけになればと思う」と述べた。山下PMCプロジェクト統括本部事業推進部門3部の三岡裕和チーフプロジェクトマネジャーは「皆さんと共創して進めていきたい」と締めくくった。