桜が大きくなったような花を咲かせるアカヤシオ。雪解けが進んだ標高2000メートルくらいまでの山なら、この時期に見頃を迎える▼ツツジ科の落葉低木で、紅葉の時期は葉が深紅に染まり山を映えさせる。春も秋も山を彩るアカヤシオは、四季の山野草の代表格と言えるだろう▼その花で有名な日本百名山の一つを連休中に訪れると、今年も多くの登山客でぎわっていた。狭い登山道の登りと下りの人が出くわす地点では、すれ違いの待ち時間がどうしても長くなってしまう▼前をゆっくりと歩いていたご夫婦が立ち止まり「こっちもきれい」と話すのを聞いた。見ると白い花を二つ咲かせるニリンソウの群生地がアカヤシオのそばにあった。小欄は帰りの道路渋滞を避けるために少しでも早く下山しようとしていた時であり、周囲にもっと目を向ければ心に留めておきたいものは多いのだと教えていただいた気がした▼ここの登山道に至る県道は4月に土砂崩れで通行止めになったが、地元建設業による迅速な復旧工事で同日中に住民の孤立が解消された。山までの道中の安全がそうして支えられていることも忘れずにいたい。