回転窓/気軽に立ち寄れる図書館

2025年5月2日 論説・コラム [1面]

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 近所にある公共図書館は所蔵数が10万冊弱と中規模ながら、地域の歴史や文化に関する資料が充実している。本棚を眺めたり本を読んだりするだけでなく、静かで没入できる空間も魅力の一つ▼先日、東京都多摩市で2023年7月に開館した市立中央図書館を訪ねた。隣接する公園のグランドオープンと重なり、にぎわいが館内にもあふれていた▼中央図書館は対照的な空間が一つの建築にまとめられているのが特徴。専門的な資料を蓄え、静けさや落ち着きのある「静寂的空間」と、市民に身近で親しみやすく、にぎわいや活気に包まれた「広場的空間」がフロアを分けて共存する▼公共図書館の運営に長年携わり、この施設の基本構想策定にも関わった常世田良氏は「図書館は本を読んだり貸したりするところではなく、本の中身(知識や情報)を提供するところ」という。これからのコンセプトは市民一人一人の自己実現を支援し、働き盛り世代のまちづくり拠点になることだそうだ▼大量の本がある棚を見ているだけで想像力や思考をかき立てられる。街中の書店が減る中、誰もが気軽に立ち寄れる図書館が増えてほしい。