日本で最もよく知られている安全標語と言えば「安全第一」であろう。大正時代に生まれて広まるが、同じ頃に誕生するもう一つの標語があった▼それは当時の古河鉱業足尾鉱業所(足尾銅山)に掲げられた「安全専一」。工部大学校土木工学科の卒業後、土木工事や鉄道工事などに従事した同所長の小田川全之が、米国産業界で提唱されていた「セーフティー・ファースト」をそう訳し、国内事業場で初となる安全運動を始めた▼同じく米国の安全思想に感銘を受け、「安全第一」の日本語訳でリスク管理の重要性を唱えたのが逓信官僚の内田嘉吉。東京電気(現東芝)に勤務していた蒲生俊文らと共に安全第一運動の推進に尽力する▼厚生労働省の発表によると、2025年度全国安全週間(7月1~7日)のスローガンは「多様な仲間と 築く安全 未来の職場」に決まった。今年も6月の準備期間からさまざまな取り組みが展開される▼戦時中も中断することなく続けられて98回目を迎える全国安全週間は、職場での安全意識高揚と安全活動の定着を図るのが狙いだ。いつの時代にも共通する目標は「ゼロ災害」実現である。