政府/民間の衛星利用促進へ、水道漏水や地形変化把握・新技術実装目指す

2025年5月8日 行政・団体 [1面]

文字サイズ

 政府は平時や災害時を問わず民間の人工衛星の活用に力を入れる。多数の小型衛星を連携させ、低コストで高精度の測定が可能な「衛星コンステレーション」の確立を目指し、省庁横断で活用促進と国内産業の育成に取り組む。2025年度は上下水道の老朽化リスク把握や、民間衛星を活用した地形変化や構造物変位の把握手法開発といった施策を展開。政府機関による民間サービスの利用を促していく方針だ。
 政府は民間企業が宇宙分野の進出を加速していることを踏まえ、24年度から3カ年を「民間衛星の活用拡大期間」と定めている。政府全体で宇宙スタートアップからの調達に取り組み、投資促進の好循環による国内産業の育成を目指す。3月に開いた宇宙戦略本部会合では、活用拡大期間2年目となる25年度の各省庁の取り組みをまとめた。
 国土交通省は上下水道の老朽化リスクの把握で衛星利用を進めているほか、災害時には被災状況調査や土砂崩れ、ダムなど大型構造物の変状把握に用いる方針。農林水産省はスマート農業への応用、環境省が温室効果ガスの状況把握などに衛星情報を役立てる。
 埼玉県八潮市の道路陥没事故を受け、上下水道の老朽化対策が注目される中、国交省は衛星から漏水を捉える技術の開発を重点分野の一つに据えた。既に複数の民間企業がサービス展開しており、同省は25年3月に公表した「上下水道DX技術カタログ」に関連技術を掲載。今後さらなる現場活用を促す。
 河川分野では被災後にSAR(合成開口レーダー)衛星で地形やダムなど構造物を計測し、変状や地滑りといった被災状況を効率的に把握する技術の開発が進む。国交省は実証実験で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のだいち2号を使って地滑りやダム堤体の変位監視に利用できることを確認。23年度からは内閣府の「研究開発成果の社会実装への橋渡しプログラム(BRIDGE)」を活用した社会実装を進めており、衛星コンステレーション確立でより低コスト、高精度の観測を可能にする。
 衛星コンステレーション確立は災害時の被災状況調査にも効果を発揮する。JAXAが運用するだいち2、4号は、観測頻度が1、2日に1回程度だが、衛星コンステレーションによって2時間に1回程度まで向上する見込み。発災後の情報収集の迅速化につながると期待される。