回転窓/春の恵みを味わう

2025年5月12日 論説・コラム [1面]

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 5月の連休に信州長野の山里を訪れ、この地域で露地栽培された山菜「ウルイ」の料理を堪能した。春から初夏にかけてのちょうど今頃が旬を迎えている▼ユリ科ギボウシ属の多年草である「大場擬宝珠(オオバギボウシ)」の若芽がウルイ。一説にはウリの皮に似た色の葉が丸まって立つように生える姿から「瓜菜(ウリナ)」と呼ばれ、これがウルイに変化したという▼生で食べるとシャキシャキとした歯応えで味にクセはなく、おひたしやあえ物、煮物、天ぷらなどにしてもいい。その特徴は「若いものはほんのりとした苦み、特有のぬらめきで、うまい」と『野外ハンドブック・1 山菜』(山と渓谷社)に書かれている▼野山に出かけ野生の山菜を採るのも楽しいけれど、山中での事故には十分気を付けたい。夢中になり過ぎて道に迷ったりクマに遭遇して襲われたりすることもある。よく似た有毒植物を誤って食べてしまう危険も伴う。今年もそうした複数の事故が報道されている▼ウルイは丸まった葉の開く前が食べ頃。例年2月頃から促成栽培のものも出荷されるが、春の恵みを味わえる期間はそう長くない。