回転窓/天丼の極意とは…

2025年5月14日 論説・コラム [1面]

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 東京・日本橋人形町は老舗の料理店が多い場所として知られる。風情のある街並みに溶け込む名店の数々に名物メニューを味わおうと多くの人が訪れる▼香ばしく濃厚なタレをかけた黒天丼が有名で、いつかは行ってみたいと思っていたお店に先日お邪魔した。丼からはみ出た天ぷらはタレがたっぷりと染みこみ、白米とのバランスも絶妙。ボリュームはあったが、あっという間に完食してしまった▼天丼は江戸時代後期に江戸の町で生まれたという。屋台や露店で丼の上に天ぷらをのせ、お客に提供したのが始まりとか。手軽に庶民が味わう様子を想像すると、今でいうファストフードだったのだろう▼漫才やコントで同じボケやギャグを何度も繰り返して笑いを生み出す手法を「天丼」という。天丼にエビが2本以上のっているのにかけ、同じ話題を並べることが由来だそう。なんとも風流でしゃれた名付けだと感心した▼空気を読みながら笑いを引き出すタイミング、言葉のチョイスや強弱は芸人のセンスや経験が物を言う。天丼の極意は言葉を職業にした新聞記者にも相通じるところがあるかもしれないなと思った次第。

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