インフロニアHD、三井住友建設/経営統合で難局に対処、エンジ力の強化に期待

2025年5月16日 企業・経営 [1面]

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 インフロニア・ホールディングス(HD)が三井住友建設へのTOB(株式公開買い付け)を7月上旬にも開始する。三井住友建設もTOBに賛同しており、成立すれば2026年1月にもインフロニアHDの事業会社になる。単純合算した両社の売上高は25年3月期の連結ベースで約1・3兆円。大手ゼネコンに次ぐ準大手クラスでトップの規模になる。事業の全領域で相互補完とシナジー(相乗効果)を発揮し、建設産業が直面する厳しい経営環境に対処しつつ、持続的成長を目指すことになる。
 インフロニアHDの岐部一誠社長と三井住友建設の柴田敏雄社長が14日に東京都内で会見し、経営統合を決断した経緯などを説明した。岐部氏は「建設業界も優勝劣敗が進み差別化しないと勝ち残れない」と指摘。経営統合によって「設計から施工管理まで技術的なスキルを生かし安全にプロジェクトを進めるエンジニアリング力が高められる」とし、「請負と脱請負の両方でさらなる成長の原動力になる」と強調した。柴田氏は「極めて重い決断だった。業界新機軸としてシナジーを最大限発揮したい」と述べた。
 25年3月期の連結業績はインフロニアHDが売上高8475億円、営業利益485億円、三井住友建設が売上高4629億円、営業利益75億円。前田建設は土木、建築の両分野での豊富な実績に加え、道路や上下水道、空港などインフラの維持管理・運営など“脱請負”の領域に積極進出している。三井住友建設はプレストレストコンクリート(PC)技術を活用した橋梁や建築物の建設で業界トップクラスの技術と実績があり、海外市場でも長く事業を展開する。
 両社は強みを融合しながらエンジニアリング力に磨きをかけ、経営規模の拡大や財務基盤の強化を目指す。TOBが成立し新体制に移行しても「当面、両社の組織や人事は大幅に変更しない方針」(岐部氏)。現時点で前田建設と三井住友建設の合併などは否定したが、「(経営統合後に)現場サイドからその方がいいという意見が出てくれば真剣に検討する」という。柴田氏も「統合後はHDとして最適解を求めないといけない」との見解を示した。
 岐部氏は、三井住友建設と親子上場する三井住建道路にも触れ「親子上場をすぐに解消しようとは思わない。じっくり時間をかけ前田道路との関係(協業などの可能性)も検討する」と述べた。経営統合後はインフロニアHDと三井住友建設の両方にタスクフォースを設け、現場レベルで役割分担やシナジー戦略の議論を深める。