新社長/久米設計・井上宏氏、最適な価値提案で期待に応える

2025年5月26日 人事・動静 [1面]

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 1932年に創設した組織設計事務所の7代目の社長として、経営のかじ取りを託された。歴史や伝統、文化を引き継ぎながら、新しい企業風土を創り上げる。培ってきたデザイン力、技術力、マネジメント力をさらに磨き、顧客のどのような要求にも応えられる企業へと成長を目指す。
 --就任の抱負を。
 「今年で創設93年を迎え、進む先に100年が見えてきた。100年企業を意識して個人の力と組織の力をアップデートしながら、新しい時代の都市・建築づくりで常に最適な価値を提案して顧客の期待に応えていきたい。従来の業務範囲にとらわれず、顧客の事業を幅広く支援していく」
 「コンプライアンスを最優先にする企業風土の再構築など、これまで以上のガバナンス(企業統治)に向けても改革の手を入れながら、顧客の信頼へつなげていきたい」
 --多様化、複雑化する顧客ニーズにどう応える。
 「設計自体が顧客の価値創出となるよう『設計推進本部』を4月に新設した。設計本部や環境技術本部などと独立した組織で、設計やエンジニアリングの対応力強化を進め、設計品質の向上を支援する。これまで蓄積してきた知見を社会の変化に追従するよう全社横断的、継続的な研究開発も担う。一つ一つのプロジェクトに対するパフォーマンスの最大化を目指す」
 「社会や顧客の課題を発見して新たな価値づくりを支援するために『ソーシャルデザイン室』を2022年に設置した。まちづくりや仕組みづくり、ソフトづくりにつながる提案や活動を行い、実績も重ねている。今後も事業の初期段階からさまざまな価値を提案し、より良い事業や資産に貢献していきたい」
 --マネジメントの重要性が一段と高まっている。
 「顧客に寄り添って応えていくため、PM(プロジェクトマネジメント)の強化を続けている。設計に入る前の段階から幅広くコンサルティングしていく。顧客が事業を組み立てる段階からマネジメントを行うことにより、設計段階の大掛かりな工事費調整を回避することも可能になる。最新の市況を見合いながら、事業費、規模設定、用途設定、収益など、事業全体の組み立てと合わせたハード整備の最適化を事業者と共に行うことができる」
 --求める人材像とは。
 「総合事務所として第一線で広く活躍できる人材を大事にしている。そのためには人間力と技術力の両面を磨かなければいけない。顧客に寄り添ってきちんとニーズや課題を引き出す『対話する力』と、その応えを生み出せる『専門技術スキル』を持つ人材を育てていきたい」。
 (4月15日就任)
 (いのうえ・ひろし)1991年武蔵工業大学(現東京都市大学)工学部建築学科卒、久米建築事務所(現久米設計)入社。都市開発ソリューション部長、ソーシャルデザイン室長、執行役員開発マネジメント本部長などを歴任。フォーシーズンズホテル京都、東急歌舞伎町タワーなどを担当。趣味はスポーツと海外旅行。神奈川県出身、57歳。