PPP/PFIの導入を検討する公共事業の対象を広げる地方自治体が増えてきた。国が推奨する金額を下回る事業でも導入を優先的に検討している団体がある。北海道中富良野町のように民間参入が見込まれ、PPP/PFIの効果が期待できる場合は導入を検討するよう定める団体も出てきた。老朽施設の再編や公有地の活用などでPPP/PFIの導入に前向きな自治体は多く、行方が注目される。
国の「多様なPPP/PFI手法導入を優先的に検討するための指針(優先的検討指針)」は、検討対象とする公共施設整備事業の基準を事業費総額10億円以上や単年度運営費1億円以上と定めている。
内閣府民間資金等活用事業推進室によると、川崎市は金額や規模などで制限せず、ハード関係は原則すべての施設整備・管理運営事業でPPP/PFIの導入を優先的に検討することにしている。
東京都西東京市は事業費総額1億円以上の公共施設整備事業(建設、改修など)と単年度事業費2000万円以上の公共施設整備事業(維持管理、運営など)を対象にした。福島県会津若松市は、建設・製造または改修の公共施設整備事業は事業費総額5億円以上で、運営も含む公共施設整備事業は同10億円以上が対象。運営だけでも単年度事業費が5000万円以上であれば導入を検討する。
2022年にPPP/PFI手法導入の優先的検討規定を定めた愛知県豊明市。公共施設整備事業は、事業費総額1億円以上(建設、製造または改修)などとともに、検討を行う必要があると判断した場合も検討対象にしている。規定の策定では類似規模の自治体へのヒアリングや、23年度からの10年間の建て替え・修繕・更新の費用を踏まえた。
24年にPPP/PFIの優先的検討ガイドラインを策定した中富良野町は、事業費総額2億円以上の公共施設整備事業(建設・設計)などが対象。ただし具体的に民間事業者の参入希望があるようなら基準を満たさなくても導入を優先的に検討する。公有財産を利活用する事業は3000平方メートル以上だけでなく、当面の行政利用が見込まれない財産も導入を検討するとした。
PPP/PFIを優先的に検討する規定を設けた自治体の割合は24年3月末時点で▽人口10万人以上20万人未満の市区=56%(21年3月末15%)▽人口5万人以上10万人未満の市区町=16%(6%)▽人口1万人以上5万人未満の市町村=4%(1%)▽人口1万人未満の市町村=1%(1%)。
政府は、規定の策定・運用を促進する自治体を現在の人口10万人以上から同5万人以上に拡大する方向で調整中。優先的検討指針の基準を下回る事業でも検討を促す措置も講じる予定で、自治体の導入検討はさらに進むことになりそうだ。