回転窓/デザイン力でサイクル回す

2025年6月6日 論説・コラム [1面]

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 建築家菊竹清訓氏(1928~2011年)が弱冠30歳で完成させた自邸「スカイハウス」(58年竣工)が、戦後に竣工した住宅で初めて国の重要文化財に指定される。文化審議会が文部科学大臣に先日答申した▼社会の変化に伴い成長する建築・都市の在り方を追求し、後の建築運動「メタボリズム」に通じる建築思想「とりかえ可能な住宅」を具現化。菊竹氏が造形力を存分に発揮した独創的で洗練された代表作の一つだ▼2008年、菊竹氏が80歳の時「これからはコンセプトの時代に入る。その中心は建築を取り巻くモノやコトの考え方だ」と語っていた。建築が脱炭素や防災・減災、デジタルなど多様で複雑なニーズに応える時代が来ると示唆していたのだろう▼政府は3日に決定した知的財産推進計画で、知的資本を生かし国内外の社会課題の解決を図る新たな知的創造サイクルの構築を掲げた。建築も著作権法で保護される知財であり、サイクルの一部を担う▼菊竹氏は「思考や考え方が世界を制覇していく」とも話した。社会に適した建築を徹底的に追求しデザインする力こそが知的資本となり、サイクルを回す原動力となる。