土木学会/南海トラフ巨大地震の被害推計/被害額は最悪で1466兆円に

2025年6月12日 行政・団体 [1面]

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 土木学会(佐々木葉会長)の「国土強靱化定量的脆弱(ぜいじゃく)性評価委員会」(委員長・藤井聡京都大学大学院教授)は11日、南海トラフ巨大地震が発生した場合、最悪のケースで被害額が1466兆円に達するとの推計結果を公表した。地震後の税収減や復興に伴う支出増で506兆円の財政負担が生じるとも指摘。事前のハード対策で経済被害が最大3~4割低減できるとの見解も示し、「官民による対策を総合的に進める必要がある」と警鐘を鳴らした。=2面に関連記事
 同評価委の最終報告書になる。南海トラフ地震の経済・資産被害額は、国が3月に公表した試算の5倍を超える。経済被害は1241兆円、資産被害は225兆円。国の試算と比べ経済被害は20倍以上と推計した。インフラ破損など直接的被害に加え、被災地の生産量低下、企業収益と世帯所得の減少など間接被害も考慮したのが主因だ。
 被害低減に必要な事業費や事前対策の効果も示した。道路網整備や無電柱化、橋梁の耐震補強などに29・6兆円、港湾対策は9・3兆円など計58兆円規模の事前対策が必要とした。道路、海岸堤防、建築物、港湾・漁港の四つで事前対策を徹底することで、21・8年と見込んだ復興年数を4年短縮でき、経済被害を396兆円(31%)縮減できると算定した。被害低減は税収減の抑制と復興費用の縮減につながるとも強調。税収減の抑制で15兆円、復興費の圧縮で146兆円の財政負担が軽減できると試算した。
 報告書では物価上昇などを加味し、昨年公表した首都直下地震の被害想定額も見直した。経済・資産被害額は合わせて1110兆円と、前回から約1割増えた。南海トラフ地震と同様に21兆円規模を投資する事前のハード対策で、経済被害を38%減らせると見通した。
 同日、都内で会見した藤井委員長は「国の被害想定には生産量低下などの間接的な影響が十分反映できていない。本当の被害状況を理解するには経済モデルを使った推計が不可欠だ」と指摘。今後、報告書を政府に提出し防災施策に反映するよう促す。国土強靱化や防災関係の閣僚らにも対策の加速を求める方針だ。