日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)と国土交通省地方整備局など公共発注機関による2025年度「公共工事の諸課題に関する意見交換会」が16日、名古屋市内で開かれた中部地区の会合をもって全日程を終えた。時間外労働上限規制の適用から1年がたち、第3次担い手3法に基づく施策の具体化が進むなど建設業を取り巻く環境が変わりつつある中、事業量を確保し生産性も高め、持続可能で働きがいのある産業を官民でどう築いていくかに焦点を当て議論を交わした。
ここ数年、労務・資材価格の上昇により公共事業関係予算が実質目減りしている。当初予算額は6・1兆円と横ばい推移しているが、建設工事費デフレーターは急伸しており、15年度を基準に23年度は23・3%の上昇。特に直近3年間の伸び率が高い。各地方整備局発注の契約件数は19年度と比べ23年度は21%減り、1件当たりの当初契約金額は約1割増となっている。日建連は「予算が横ばいとなることで、結果的に発注件数が減少したと考えられる」と分析した。
日建連が直轄の道路・河川現場を対象に24年11月に行った調査で「工事数量減や工事打ち切りが発生した要因」(複数回答可)を聞いたところ「発注者の予算制約のため(拠出可能な予算がなくなった)」(29%)、「発注者の予算繰越が認められなかった」(11%)となった。設計変更が行われた現場のうち40%が予算関連の要因だった。清水琢三副会長土木本部副本部長は「公共工事を継続してきちっとやっていくためには事業量の確保と入札制度の改革が大切だ」と訴えた。
各整備局からは工事発注の平準化、年度をまたぐ発注予定公表の見直し、設計図書の品質向上といった具体策と方針が示された。関東整備局は契約工事数量の減少や工事打ち切りが24年度に45%の現場で生じたことを受け、設計成果の精度向上、関係機関協議の計画的な推進、必要な工事予算の確保について「発注契約責任者である事務所長、副所長に改めて徹底をしたい」と明言した。
北陸整備局は発注条件の適正化に向け、25年度に北陸地方建設事業推進協議会(工事施工対策部会)で「土木工事条件明示の手引き」「土木工事設計図書の照査ガイドライン」など工事施工の円滑化4点セットを見直す。中部整備局は設計変更に伴う工事数量の減少、工事打ち切りの対策として、工事の公告時に施工上の自然的・社会的制約、関係機関との調整状況などを明示した「施工条件明示チェックリスト」を参考資料として交付すると説明した。
日建連の佐々木嘉仁公共積算委員長はこれらの取り組みを評価した上で、「入札契約手続きの改善で受注者の負担は大幅に軽減されている」と指摘。「さらに改善が進んでいく入札契約制度の下、日建連会員企業は公共工事の品質確保に向けて一丸となって取り組む」との姿勢を見せた。