第217通常国会/改正道路法・港湾法など成立、道路啓開計画を法定化

2025年6月23日 行政・団体 [2面]

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 第217通常国会は政府提出法案のうち、国土交通省関係の5本すべて成立した。改正道路法は能登半島地震を踏まえ、道路啓開計画を法定化する。改正港湾法は、復旧工事現場近くの民有地から土砂や岩を緊急的に調達できる制度や高潮や高波に対する官民の協働防護の取り組みを進める。改正マンション関連法は適正な管理や再生を促す。同省以外は、災害対応の司令塔となる「防災監」を内閣府に新設する改正災害対策法などが成立した。
 国交省関係の改正道路法には、連携協力道路制度の創設が盛り込まれた。道路管理者の協議で道路の点検や修繕などを他の地方自治体が代行できるようにする。道の駅などの駐車場を災害拠点として活用する直轄管理代行制度も創設する。
 改正港湾法の協働防護は、計画策定や協議会設置の概要を定めた。洋上風力発電施設の整備に伴う基地港湾利用の協議会も明記した。土砂などの調達制度と補償、耐震性が不足している民間施設に対する勧告制度を規定した。
 改正マンション関連法は、建物の解体、全面リノベーション、売却の決議で必要な賛成を部屋所有者の全員から建て替えと同じ5分の4に緩和する。対策のための意思決定を早めるのが狙い。居場所が分からない所有者を決議の母数から外せることや、受託業者による住民説明の義務化を定めた。改正航空法では地方管理空港の応急災害復旧工事や、滑走路の大規模改修などを国が代行する制度を設ける。
 建設関係の法案を見ると、改正災害対策基本法の防災監は次官級のポストとなり、国の災害対応の統括、自治体との調整を担う。改正環境影響評価法は、規模などを大きく変えない発電施設の環境影響評価(環境アセス)の手続きを簡略化する。立地場所調査などの一部を免除する一方、環境影響の対策を記載した書類の提出を求める。
 改正再生可能エネルギー海域利用法は、洋上風力発電施設の設置区域を排他的経済水域(EEZ)の範囲まで拡大する。自然条件が適当な区域を国が指定し、基準を満たした場合、設置を許可する。同法を巡っては24年通常国会に提出された改正案が廃案になっていた。
 改正下請代金支払遅延等防止法(改正下請法)・下請中小企業振興法は、価格協議を発注者が十分に行わず、一方的に支払代金を決める行為を禁止する。下請法は通称を「中小受託取引適正化法(取適法)」とする。発注者と受注者の上下関係が印象付けられてしまうため、下請事業者は「中小受託事業者」、親事業者は「委託事業者」に変更する。
 改正グリーントランスフォーメーション(GX)推進法は、二酸化炭素(CO2)排出量が10万トン以上の企業に排出量取引制度への参加を義務付ける。同制度は26年度に運用を始める。改正国際協力機構(JICA)法は、JICAが途上国企業の債権を取得するなど、民間資金を途上国支援に活用しやすくする。
 改正労働安全衛生法・作業環境測定法は、個人事業者の安全衛生対策、職場のメンタルヘルス対策の強化が狙い。AIの開発促進とリスク対応を両にらみした新法の「人工知能関連技術の研究開発および活用の推進に関する法律」(AI新法)は、技術革新を妨げないよう罰則規定の整備を見送った。
 女性管理職比率や男女間の賃金格差の公表対象を拡大したり、カスタマーハラスメントの対策を義務付けたりする改正労働施策総合推進法なども成立した。議員立法は、能登半島地震を受けて半島地域の強靱化を促す改正半島振興法や、トラックドライバーの処遇改善を促す改正貨物自動車運送事業法などが成立した。
 成立した主な法律と主要事項の施行日は次の通り。
 ▽改正道路法=4月16日
 ▽改正港湾法=4月23日の公布から3カ月以内に一部施行
 ▽改正マンション関連法=5月30日の公布から6カ月以内に一部施行
 ▽改正航空法=6月6日の公布から6カ月以内
 ▽改正災害対策基本法=一部は6月4日
 ▽改正環境影響評価法=6月20日の公布から1年以内
 ▽改正再生可能エネルギー海域利用法=6月11日の公布から1年以内
 ▽改正下請代金支払遅延等防止法・下請中小企業振興法=2026年1月1日
 ▽改正GX推進法=26年4月1日
 ▽改正JICA法=4月17日
 ▽改正労働安全衛生法・作業環境測定法=26年1月1日
 ▽AI新法=6月4日の公布から一部施行
 ▽改正労働施策総合推進法=6月11日の公布から一部施行
 ▽改正半島振興法=4月1日。
 ▽改正貨物自動車運送事業法=6月11日の公布から1年以内に一部施行。