日建連・意見交換会を振り返る・中/物流制約や資材高騰に苦慮

2025年6月24日 行政・団体 [1面]

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 「時間外労働の上限規制の適用から1年が経過し、新たな課題も生じている」。日本建設業連合会(日建連、宮本洋一会長)の押味至一副会長土木本部長は現場の実態をこう話す。
 会員企業58社を対象に2024年秋に行った調査によると、3億円以上の土木工事(高速道路や鉄道など民間を含む)で、時間外労働が月45時間以内、年間360時間以内の原則規制に抵触する社員がいる現場は39%だった。前年調査から28ポイント改善したが、資機材を搬入する物流業界への規制適用、生コンクリート打設やクレーン作業の時間制約など自助努力だけでは克服できない課題に直面している。
 24年4月に建設業と同じく物流業にも時間外労働上限規制が適用された。これによる影響として「資機材や運搬費コストが上昇した」「資機材の納入日や納入時間の指定が難しくなった」などの声が現場から上がっている。こうした実態を受け、日建連は「スライド条項の適用や余裕を持った工期の設定、積算基準の早期見直しに加え、資機材の保管などにも活用できる十分なヤードを確保するなど柔軟な対応が必要だ」と指摘。受発注者が連携してさまざまな取り組みを講じ、時間外労働のさらなる削減を訴えた。
 東北エリアでは東北整備局、東北6県、市町村が連携し工事書類の統一と標準化を進め、国の様式が使えるようにした。四国整備局は「25年度から本官工事は(土日閉所の)完全週休2日としている」と説明した。さらに建設DX技術活用省人化モデル工事も「25年度から受注者選定の新技術の必要経費を発注者が負担する」方針を示した。
 北陸整備局はヤードの確保について「設計審査会などを通じて活用を協議する」とした。北海道開発局は25年度に移動時間などを踏まえ歩掛かりを改定し、実勢に合わせ主要資材単価を毎月見直している。プレキャスト(PCa)の活用拡大には、コスト以外に着目したマニュアルやガイドラインの整備が進む。北陸、近畿、中国の各整備局は既にマニュアルの策定を終え、運用段階に入る。
 池田謙太郎公共生産委員長は「書類の共通化など運用状況を知らせ、他の地方整備局に展開していただきたい」と期待した。「発注者との二人三脚で頑張っていきたい」と官民連携で取り組む姿勢を示した。