技術開発への集中投資や経営資源の有効活用、顧客層と事業分野の組み合わせの最適化などで収益を確保する。各事業本部に自走型で業務に取り組んでもらい、社員のエンゲージメントを高めていく。親会社となった東京海上ホールディングス(HD)のリソースも活用する。
--経営方針を。
「賃上げやインフレを考慮すると、売上高が年間4、5%程度伸びていく状態が望ましい。そのためには生産性の向上が欠かせない。現在は売上高の1・5~2%を技術開発に投資し、うち6、7割をAIや自動設計に充てている。今後2、3年間でさらに集中的に投資し、スピード感を持って取り組みたい」
「持ち株会社のID&EHDの長期経営戦略は、2030年度のコンサルティング事業の目標売上収益を1400億円と設定している。国内と国外がともに700億円という内訳で、目標の達成は現実的と見ている。国内は現在500億円程度の売上高となっており、残りの200億円分の確保に向けて、自社の経営資源を活用したオーガニック売上高をどれだけ伸ばせるかが鍵となる。海外は現地法人の業績が好調なことが追い風となりそうだ」
--目標達成に向けた内部体制は。
「各事業本部には数値目標だけを提示し、それを達成するために本部ごとの最適な手段を考えてもらう。執行役員や役職者をはじめとした社員にエンゲージメントを高めてもらうため、評価制度も変えていく。まずは現状を把握するためにエンゲージメント調査を行い、結果を具体的な制度などに反映させたい」
「経営資源の効率的な活用に向け、昨年7月に始まった現中期経営計画では事業ポートフォリオマネジメントの強化を掲げている。25年度は、顧客層と事業分野をどう組み合わせれば最も収益を伸ばせるかを検討する。投下資本利益率(ROIC)の考え方も取り入れる。こうして増やした収益を社員に還元したい」
--東京海上HDと連携しての動きは。
「東京海上HDはAI関連などのスタートアップに幅広く投資している。こうしたネットワークを活用して協業し、これまでつながりが少なかった民間分野にも建設コンサルタントの技術を広めたい。AI利用に関する規制緩和を見据え、発注者と情報を共有し『目線合わせ』もしていく必要がある」
「建設コンサルタントと保険サービスを合わせた『民間防災コンサルティング』分野の案件がいくつか成約している。契約や事業化のスピードを半年程度で見極め、東京海上HDと調整した上で26年度の事業計画に反映させる」。
(7月1日就任)
(ふくおか・ともひさ)1988年東京工業大学(現東京科学大学)大学院総合理工学研究科社会開発工学専攻修了、日本工営入社、2023年代表取締役兼副社長執行役員。孫子の兵法を好み、お気に入りの一節は「勝兵は先ず勝ちて、而る後に戦を求む」。準備に念を入れて新しい仕事に臨むことが重要と説く。愛知県出身、61歳。