白書を読む/国交省が「国民意識調査」、建設業の担い手不足・半数超が「深刻」認識

2025年7月3日 行政・団体 [12面]

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 国土交通省が先月公表した2025年版の「国土交通白書」では、建設業などの担い手不足に起因するサービスの供給制約を取り上げた。時間外労働の上限規制適用や資材高騰などの物価高も重なり、生活に必要な身近なサービスの維持・存続が危ぶまれる状況にあると指摘。国民への意識調査を通じ、一般市民目線で現状認識や国土交通行政の役割を捉え直し、今後の施策展開を展望した。
 国交省の「国民意識調査」は2月に実施。18歳以上で国内在住の3000人を対象にインターネットで回答してもらった。
 国交省所管の建設業や物流業の担い手不足の認識を聞くと、建設技能者を「深刻」と答えたのは67・6%、建設技術者が「深刻」と答えたのは55・8%といずれも半数を超えた。
 担い手確保が難しい背景として50代以上の回答者は「未経験では習得し難い専門的なスキルが必要」と技能面のハードルを多く挙げ、30代以下は「労働時間が長い」や「休みが不規則・取れない」と労働環境面の課題を挙げる傾向があった。建設業への入職が進まない課題の認識で世代間ギャップがあることが浮き彫りになった。
 同じギャップは担い手確保策への意見にも見て取れる。「(専門的スキルの)人材育成」や「外国人材の採用」との回答は約6割が50代以上。「賃上げ」や「(休憩・空調設備の充実など)職場環境の改善」との回答は50代以上が5割に満たず、30代以下が3割超を占めた。
 国民に身近なサービスのうち、廃止やサービス水準低下があると困るもので最も多かったのは「メンテナンス不足で水道の断水・漏水が発生する」。鉄道やバスの減便・廃止、宅配便や郵便物の遅配も多く挙がったが、それらを回答割合で上回った。日常生活に欠かせないインフラが安定的に利用できることが何よりも求められている証拠だ。
 サービス維持のための値上げを受け入れられるかどうか聞いたところ「多少の値上げはやむを得ない」が40・1%で、反対に「(価格維持のためならば)多少のサービス低下はやむを得ない」が17・8%だった。
 担い手確保のため行政に期待される役割(複数回答)は「賃上げの促進」が84・1%で最多。「人材育成の支援」(回答割合54・0%)、「適切な価格転嫁への支援」(39・1%)、「外国人材の受け入れ促進」(24・4%)、「適切な工期・納期確保への支援」(21・9%)といった回答も一定数あるが、やはり賃金面の改善に向けた対応が必要との認識が大きいようだ。
 担い手不足に起因するサービスの供給制約に対し、賃上げなどによる担い手の確保が「緩和策」だとすると、将来的な担い手の減少を前提とした「適応策」として国交省への期待が大きいのが、建設工事などの省人化・省力化につながる技術開発・普及促進や、効率的な生活インフラの長寿命化への支援だ。
 具体的な省人化・省力化技術として特に自動化技術の活用が求められている。建設分野では「建設工事の施工を自動化する建設機械・ロボットの活用」、「ロボットやAIを活用したインフラメンテナンス」を活用すべきとの回答が多く寄せられた。技術開発を財政面で支援する制度の創設や、新技術の実証実験を行う環境の整備を行政に求める声がある。
 官民の役割分担を見直し「民」の活動領域を拡大すべきとの認識は、ある程度国民に広まっている。サービス供給方法の見直しで行政に期待することは「民間資金・ノウハウを活用した整備の促進(PPP/PFI)」が最も多く、回答率は5割を超えた。サービス維持のため民間に「必要な範囲に限り担ってもらうべき」や「効率的な業務実施が期待できるので積極的に担ってもらうべき」など、行政の責任の下でその業務の一部を民間に担ってもらうことには約7割の回答者が賛同意見を寄せた。
 一方、一般市民など需要者側の協力として「地域住民の手による橋などのメンテナンス」の賛否を聞いたところ「受け入れられない」との回答は45・7%だった。ただ具体的な協力方法として「増税や料金引き上げ」といった金銭負担は「実施すべきでない」が48・7%で否定的な傾向があったが、地域住民による「美化・清掃への協力」や「維持管理・保全工事への協力」は「実施すべき」が5~6割で肯定する回答が多かった。経済的な負担よりも、維持管理の主体として住民自らが参加する意志が強いことが明らかになった格好だ。