高校の授業で橋やダムなどの大きな構造物を造る土木の世界を知り、心が引かれた。大学で構造力学などを専攻。「最も現場に近い仕事」に魅力を感じ、働くならゼネコンと思うようになった。就職先に選んだのはインフラ整備に強みがあるフジタ。大学時代を過ごした広島がルーツの企業で不思議な縁を感じた。
入社後は希望通り土木工事の現場に配属された。2カ所目の現場でアンダーパスの施工を担当。コンクリート打設の時間配分という、構造物の品質に直結する重要な工程を任された。「時間の制約など緊張感のある作業だった分、道路が開通した時の感動は今も忘れられない」。
土木技術者として大切にしているのはコミュニケーション。現場は日々刻々と変化していく。計画通り安全に万全を期して作業を進めるには周囲との対話や情報の共有が不可欠。「どうすれば動きやすいか」を自問自答し、「現場の声に耳を傾け柔軟に対応する」ことを意識している。
「努力の成果が目に見え大きな達成感が得られる」のが土木工事の魅力と話す。入社前に描いていたイメージと実際にギャップはなく、やりがいを実感しながら仕事と向き合っている。これからは後輩が増え担う責任も大きくなる。
尊敬する上司と同じように「ミスが起こった時に責めるのではなく、寄り添って原因を一緒に考える存在になりたい」という思いを心に秘め、発電所周辺の壁構造物を造る新たな現場に赴く。
(いとう・きょうこ)