山口県山陽小野田市は人口減少や公共施設の老朽化、市有地の有効利用といった課題と向き合っている。「民間の手を借りない限り、まちづくりはこれから先進まない」(藤田剛二市長)。市は官民が対等のパートナーとなる「協創のまちづくり」を目指している。
市は土地を現物出資するが、合同会社の経営には関与しない枠組みにした。公共性を担保するため議決権を持つが、権限と責任を小さくする代わりに、利益の分配は受けないと合同会社の定款に定めた。全国初の官民共同事業体(LABV)方式は、実績を得ることが民間の参加動機の一つになり得た。それでも開発の対象に大型商業施設に近接する収益性の高い用地を組み込み、事業性を手当てし、民間が優先交渉権を得たくなるよう事業の魅力を高めた。
市は供用開始した複合施設「Aスクエア」を含め計4カ所の用地の開発事業期間が40年を超えるとみている。公共性も事業性も重視した長期間のまちづくりを民間主導で進める上で、藤田市長は「(民間が)実力を発揮できる環境を整えられた」と受け止めている。
プロジェクトの検討・調整は、YMFG ZONEプラニング(YMZOP、山口県下関市、藏重嘉伸社長)が担った。山口フィナンシャルグループ(YMFG)の傘下企業で、まちづくりの事業可能性調査や地方自治体のアドバイザリー業務などを行っている。
LABVの事業化の検討が始まったのは2018年度。築40年の市の商工センターと、同60年の山口銀行小野田支店の建物を巡る市と同行関係者の雑談がきっかけだった。藏重社長はコンサルタント業務を受託し、事業化の検討に入った当時を振り返り「将来の収益から逆算した」と話す。
Aスクエアの供用開始から1年3カ月。藏重社長はLABV方式の事業を軌道に乗せるポイントに▽事業性▽チームづくり▽まちづくり(エリアの面的再生)の視点-の三つを挙げる。民間資金を可能な限り活用し、採算が見込める施設を適正規模で整備する体制を整え、公共施設を集約した跡地の整備を一体的・連鎖的に考える必要があるためだ。
LABVの合同会社に出資する事業パートナー6者は、半数を山陽小野田市内の企業が占める。YMZOPは、山口、広島、北九州のエリアで、官民連携の案件形成の場となる「PPP/PFI官民連携プラットフォーム」を運営している。YMFGは中期経営計画に「地域課題解決のプラットフォーマー」を目指すとうたっている。「地元企業の出番をつくりたい」と藏重社長。今後も地域のために背中を押す提案を自治体と企業に働き掛ける。