仮設工業会(豊澤康男会長)は、新ヒヤリ・グッジョブ(新ヒヤリGJ)報告のアプリケーション「KATETOS(カテトス)」の本格提供を14日に始める。現場の重大事故につながるヒヤリハットと、重大災害を防いだ行動をまとめた新ヒヤリGJ報告を蓄積していくツール。2025年度は、新ヒヤリGJ報告とメタバース(3D仮想空間)を活用した教育プログラムの充実、仮設工事向けBIMに事故リスクの情報を付加した「8D BIM」の開発も進める。
7日に東京都内で「仮設工事におけるDX時代のレジリエンス能力向上対策に関する検討委員会」(仮設DX委員会、建山和由委員長)を開き、今後の取り組みを確認した=写真。
カテトスは、ヒヤリハットやGJの事例を収集、分析することで、労働災害を防ぐGJが出やすい職場の形成や、個人の危険回避能力の向上に役立つと期待されている。1アカウント月額300円を予定。建設労務安全研究会(労研)会員企業の現場でトライアルなどを進めていた。
報告者に対するヒアリングに生成AIを活用する機能を追加し、社会実装に踏み切る。現場の事故を未然に防ぐために作業員が個人的に知っていたり、取り組んでいたりする「暗黙知」の収集と可視化にも役立つと見ている。
教育プログラムは、足場関係の作業を対象にヒヤリハットが発生した原因と、その背後にある「職長も忙しく手順を詳しく聞けなかった」といった要因から、対策とGJが分かるような教育コンテンツを整えていく。8D BIMは足場のBIMモデルにリスクポイントに関係する情報を付与していく。
仮設DX委員会では各分科会の成果を確認し、今後の対応について意見交換した。スウェーデンの現場の省人化をはじめとする事情調査、オーストラリアの労働安全衛生行政の紹介・報告、国土交通省によるi-Construction2・0の説明も行った。
冒頭、建山委員長は「成果を現場で生かす議論をしっかりしたい」とあいさつした。委員からは高齢作業員向けの対策を充実するよう求める意見が出た。「安全はコストではなく投資」と捉えた取り組みの推進を提案した意見もあった。
ヒヤリハットの事例を発注者に報告しにくい環境の是正が必要と指摘した委員もいた。豊澤会長は「建設業の労働安全性、生産性を上げるたくさんの成果、芽が出た。引き続き協力をお願いする」と締めくくった。
同委員会は6月までを第1期とし、7月からを第2期の活動期間とする。