量子コンピューティング技術の普及啓発や研究支援などに取り組む「日本量子コンピューティング協会」(代表理事・高野秀隆長大クオンタム推進部長)が人材育成に力を入れ、新たな事業を創設する。協会の認定資格者を増やしながら、資格者同士のコミュニティー形成も促す。認定資格者が興した企業を支援し、事業の成長を促進するインキュベーション事業を協会活動の柱の一つに育てていく方針だ。
量子技術の普及には、それを使いこなせる人材の育成が重要となる。高野代表理事は、量子に関わる知識やノウハウをどれだけ保有しているか判断するのに「資格制度が鍵となる」と指摘する。
同協会は資格取得のため▽量子エンジニア講座(アニーリング式)〈エントリーコース〉▽同(同)〈アドバンスコース〉▽量子エンジニア講座(ゲート式)〈エントリーコース〉▽同(同)〈アドバンスコース〉▽量子ジェネラリスト講座-の五つの講座を運営している。資格合格者のコミュニティーを活性化し、資格者が起業した事業との結び付きを強める。
特別会員の長大はまちづくりの課題解決に量子技術を活用する「クオンタムシティ」の社会実装に向け、担い手の育成を急いでいる。同社事業戦略推進統轄部の菊地英一事業部長は「量子人材のスキルを長大のリソースとしても活用できる組織をつくりたい」とした上で、「(資格者の興した企業が)新規株式公開(IPO)した際に株式を取得し、大きくリターンが帰ってくるような形がとれるといい」と青写真を描く。大型プロジェクトを担う時、資格者の企業と連携、協働する体制を整えたい考えだ。
長大と協会会員企業のblueqat(東京都渋谷区)らは6月12日に都内で交流会「Innovation Cities vol.4 Quantum City~量子コンピュータによるまちづくり~」を開催。長大が交通分析に量子技術を取り入れる「報酬発生型ルート案内システム」、同協会が量子技術の資格講座について説明したほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、TOPPANデジタル、札幌市などの担当者が量子技術の活用事例を発表した。交流会などの活動を続け事例を共有し、新しい事業展開の在り方を探っていく。