設備工事業界に追い風が吹く中、ミライト・ワングループのかじ取りを担う。NTTグループでは人工衛星の開発に長く携わった後、事業開発や制度設計、法人営業の開拓など幅広くキャリアを積んだ。「技術者」の自負を胸に、豊富な経験を生かし成長路線の継続と加速を目指す。
--就任の抱負を。
「成長を維持しつつ、もう一歩、加速しなければならない時期だ。人材の確保、育成、適材適所への配置には力を入れる。社内はベンチャー気質の人材が多く、皆と次の成長ができると考えると、楽しみでわくわくしている」
「事業環境としては国内のインフラ投資が堅調で、特に設備関係は好調だ。米国の関税政策など不安な部分はあるが、将来へ準備を固めるタイミングにある。競争優位を生むには技術開発が欠かせない。生成AIの活用など人やロボットを動かす技術・ノウハウに注目し投資を考えている。ベースである通信建設もしっかり押さえていく」
--事業成長の方針は。
「グループ会社の西武建設、国際航業と三位一体で事業シナジー(相乗効果)を出していくのが大きな流れになる。各社の施工や運用保守といった実力を組み合わせた『フルバリュー型』の提案で、顧客の価値創造につなげる。ミライト・ワングループはこの10年でM&A(企業買収・合併)を中心に、収益規模を2倍以上に拡大した。M&Aは成長のために必要な要素であり、グローバルを含め注力分野で検討している」
--注力分野は。
「グリーンエネルギーやデータセンター(DC)の関連、DXなど世の中の動きを捉えた分野になる。ICTを組み合わせる形で、特にまちづくり分野を伸ばしたい。通信建設以外でも、小さいデベロッパーみたいにインフラ関連で社会に貢献できる事業を展開し伸ばす。1月に埼玉県狭山市の道路施設管理の民間委託で優先交渉を西武建設が代表のJVで獲得した。私の故郷である福島県でも、ミライト・ワンとして3月に浪江町で地域エネルギー会社設立へ基本協定を結んだ。西武建設はジャイアンツタウンスタジアム(東京都稲城市)、グループでは四国通建が里山スタジアム(愛媛県今治市)を施工している」
「成長領域と位置付ける『みらいドメイン』の一つであるICT事業は、もう少し伸ばしたい。現行の中期経営計画(22~26年度)で、連結売上高のみらいドメイン比率を45%以上に高める目標を掲げている。全国の拠点を活用し、設備をつくって終わりではなく運用まで手伝うことでリカーリング(循環)を実現する。グループ会社の顧客に対し、クロスセルで働き掛ける必要がある」。
(6月25日就任)
(すがはら・ひでむね)1987年東北大学大学院工学研究科電気・通信工学専攻修了、日本電信電話(現NTT)入社。2018年NTTコムソリューションズ(現NTTドコモビジネス)社長、21年NTTコミュニケーションズ(同)代表取締役副社長、24年ミライト・ワン代表取締役兼副社長執行役員。柔道3段。福島県出身、63歳。