◇7000体展開、自律的に業務遂行し人手不足解消
近年の大規模言語モデル(LLM)や生成AIなどの急速な進化に伴い、複雑なタスクでも自律的に実行できるAIエージェントが社会に導入されつつある。AIサービスの開発を手掛けるPKSHA Technology(パークシャテクノロジー)は、3月時点で7000体のAIエージェントをさまざまな企業に提供。顧客のニーズに合わせてカスタマイズできAIが自律的に業務を遂行する「PKSHA AI Agents」を開発し、AIの社会実装をさらに進める。
AIエージェントとは従来のAIが進化し、より高度な自律性と問題解決能力を持つAIシステムのこと。同社の上野山氏は生成AIの進化を▽物知りなAI▽考えるAI▽行動するAI-と段階的に捉えている。チャットボットのように質問に答えるだけでなく、ユーザーの目標や状況を理解し、複数のタスクを連携させて自律的に行動することで、より複雑な要求にも応える。例えばスケジュールの調整や情報収集、タスクの実行などを専属の助手のようにサポートする。
労働人口不足が深刻な日本でAIが自ら考え・行動し、より幅広い業務を担うことへ期待が高まっている。上野山氏は「AI技術の進化は、私たちの想像をはるかに超えるスピードだ。LLMや生成AIの登場で、AIエージェントは単なる効率化支援にとどまらず、複雑なタスクを自律的に実行し、人とAIが共働する新たな社会を切り開く可能性を秘めている」と話す。
同社はこれまで自然言語処理技術を軸に、人とコミュニケーションを図る「AIソリューション」や「AI SaaS」を展開。3月時点で国内時価総額上位100社の企業のうち70%以上が導入している。
PKSHA AI Agentsは幅広い領域で展開するサービスにAIエージェントの機能を実装し、ヘルプデスク業務やナレッジ管理、営業支援、採用支援など多岐にわたる業務を担う。各社のニーズに合う形でAIエージェントを構築できるのが特徴だ。
▽プロジェクト型(新規にセミカスタマイズ型のAIエージェントを構築し活用)▽プロダクト型(既に構築されたAIエージェントを即座に活用)-の2タイプを用意。プロジェクト型は、顧客の新規のAIエージェント群を同社がサポートしながら開発していく。プロダクト型は同社が既に開発済みのAIエージェントを、顧客に派遣し、早期に効果を実感してもらう。
上野山氏は生成AIに関して「『いろいろできそうだぞ!』という期待感はあるものの、さまざまな企業がPoC(概念実証)で終わってしまうのが現状だ。AIエージェントの導入で同様の失敗を繰り返してはいけない。PoC止まりを繰り返さないためにも、まず社内で1人目のAIエージェントに働いてもらうことが鍵だ」と指摘する。1人目のAIエージェントが働き始めると、AIエージェント上で対話データなどを解析。潜在的な従業員ニーズが明らかになり、2人目、3人目と広がりやすいという。
実際、初期導入したAIが吸い上げた社員のニーズを基に、業務改善策の立案や次のAIエージェント導入へとつなげる例もある。将来的には、ナレッジの自動蓄積・継承やアバターを介した顧客対応など、さらに幅広い業務を担うことが期待される。
年額200万円から導入が可能という。日本の平均年収と比較して、半分程度のコストで人間と遜色ない働きをするAI社員を雇用できる計算だ。企業が労働力不足の解消やコスト削減のために、AIエージェントの導入を本格的に検討する大きなインセンティブとなり得る。
今後さらに多くの業務領域で共に働くPKSHA AI Agentsの展開を予定している。上野山氏は「グローバルな視点で見ると、AIを使わない企業が使う企業に勝てるとは限らない。AIが単なるツールではなく、『未来のソフトウエア』として一人一人にとって最適な助手となり相互補完し合う社会を目指し、社会全体の発展に貢献していく」と展望する。