国立大学法人/施設整備の財源・手法が多様化、寄付・命名権や都市計画制度も利用

2025年7月18日 行政・団体 [1面]

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 国立大学法人がさまざまな財源と手法で施設整備を進めている。企業の寄付やネーミングライツの料金を活用したり、定期借地権を設けた土地に民間が整備した施設を講義などに使ったりしている。地元自治体と連携し、ふるさと納税の資金や公有資産を活用する事例もある。文部科学省は施設整備に対する財政需要を踏まえ、施設整備費補助金をはじめ必要な予算確保に努める考え。財源や手法の広がりを踏まえ、有識者会議で多様な財源を巡る検討も行っていく。
 同省によると、民間や自治体が整備した施設を利用する大学が増えつつある。都市計画制度を利用するなど資産を有効に使う取り組みも進んでいる。
 福井大学は学生交流スペースの整備に、ふるさと納税と企業が寄付した資金も活用した。寄付者が指定した学校に寄付金の5分の4を交付する福井県の「県内大学の魅力向上応援」の制度を利用した。獣医学拠点を整備した鹿児島大学は、鹿児島県曽於市が企業版ふるさと納税も活用して整備した施設を借り受けた。地域のにぎわい創出を進めたい同市と連携して県立高校の跡地開発に取り組んだ。神戸大学は民間から徴収したネーミングライツ料の50%を施設管理部局の予算として維持管理や修繕に投じている。
 定期借地権を設定した上で土地を貸与し、民間が設計・建設した施設を講義にも使えるようにしているのは帯広畜産大学。民間は賃料や事業収入で建設費を償還し、維持・運営する。大学と民間は研究や人材育成に共同で取り組む。兵庫教育大学は兵庫県が整備した教育複合ビルの一部を借り受けている。
 信州大学は地区計画の提案制度を活用することで立体駐車場を整備した。施設整備に伴う面積や高さに関する規制の課題を解決。建築規制を課題と捉えている国立大学法人の施設整備担当者は多く、信州大の対応は「ほかの大学の参考になる」(文科省担当者)とみられている。
 国立大学法人の施設整備には、同省や大学改革支援・学位授与機構(NIAD)が交付している施設整備費補助金、施設費交付金や、財政融資資金の施設費貸付金が投じられている。同省が事業費2500万円以上の施設整備について調査したところ、財源の割合は施設整備費補助金を除いた補助金などが46%を占め、債権など(経営戦略に基づく資金調達)が23%、自己収入などが22%、寄付などが9%だった。
 補助金などの内訳は主に同省の「地域中核・特色ある研究大学の連携による産学官連携・共同研究の施設整備事業」、NIADの「大学・高専成長分野支援基金助成金」、経済産業省の「産学連携推進事業費補助金」。債権は長期借入金や大学債で、自己収入は積立金や病院収入などとなっていた。
 老朽化対策や安全確保のための施設整備には施設整備費補助金が投じられる。ただ更新対策をはじめ財政需要は大きく、耐災害性や施設機能の強化が求められている。国立大学は地域の人材育成や新たな社会価値を創出する機能も担っており、同省の「今後の国立大学法人等施設の整備充実に関する調査研究協力者会議」は、財源の多様化を提案し、対応の在り方を検討中。年内に最終報告をまとめる予定で行方が注目される。