自治体職員育成や広域連携が急務、発注事務の外部委託化進行/国交省調査

2025年7月18日 行政・団体 [1面]

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 地方自治体の発注関係事務のうち「設計・積算」や「監督・検査」を中心に建設コンサルタントなどへの外部委託が進んでいることが、国土交通省の調査で分かった。都道府県・政令市で職員だけでの業務遂行に困難や支障があると認識する団体は7割以上に達する。外部委託に頼ることで自前の熟練した職員が育ちにくいなどの副作用も生じており、一部の団体で若手職員の技術力向上への丁寧な育成に注力する動きがある。
 都道府県・政令市67団体のうち設計・積算は53団体、監督・検査は50団体が外部委託に頼っていた。入札不調が増加し再手続きや理由精査など手間がかかる業務がかさむことを背景に挙げる団体がある。委託先の半数程度を公益法人などが占めており、国交省は委託量が今後増えた場合にはマンパワーなどの制約から十分な補完能力を確保できない恐れがあるとする。
 全国的に土木系などの職員の減少が進行し、中堅・若手職員が不足する現状にある。調査では「通年採用の導入」(徳島県)、「役職定年職員がやりがいを持って働けるポストの創設」(鹿児島県)などの工夫が挙がった。委託先も含めた技術力向上のため「民間コンサル会社向けの積算講習会の開催」(青森県)といった取り組み例もある。
 若手職員向けに「職員同士の経験の共有や事例集の更新」(広島県)、「目指すべき職員像など技術職の育成方針の作成」(熊本県)に取り組むケースもある。
 国交省が一部の市町村に行ったヒアリングでも、職員の技術力低下の懸念は共通していた。現場での監督・検査など技術的な知見が必要な業務に手が回らず、若手の指導・教育が行き届いていない実態がある。
 国交省は打開策の一つとして発注関係事務を共同化・広域化する事例を、都道府県・政令市と意見交換する会合で紹介している。67団体のうち8団体は「橋梁点検業務の県・市町村出資法人への権限委譲」(山形県など)をはじめ発注権限代行・広域連携を取り入れているが、費用負担や地元企業への配慮の必要性を課題に挙げる声がある。